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歴史は語る 福島・医師不足のわけ

Japan In-depth / 2017年10月6日 12時0分

歴史は語る 福島・医師不足のわけ

上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)

「上昌広と福島県浜通り便り」

 

【まとめ】

・福島県の医師不足は深刻。人口10万人あたりの医師数は189人しかいない。

・医師の数が西高東低に偏っているのは、医学部が西日本に多いことが理由。

・医師数の地域格差は、歴史的背景も要因のひとつ。長期的な対策が必要。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=36489で記事をお読みください。】

 

■進まない福島への医師派遣と女医の挑戦

 

福島の医師不足は深刻だ。8月4日号で内科医不足のため、相馬地方の透析の継続が難しくなっていることを本サイトで紹介した。

大町病院の関係者は福島県庁や福島県立医大、さらに東京の大学医局に医師派遣を依頼したが、しかしながら、どこも年度途中から派遣できる医師はいなかった。

 

 この状態をみて、自ら手を挙げた医師がいた。南相馬市立総合病院の3年目の医師、山本佳奈さんだ。9月から南相馬市立総合病院からの出向という形で、大町病院の内科医として勤務することとなった。

▲写真:山本佳奈医師、大町病院内科外来にて  

©上昌広

 

山本医師は、滋賀医大在学中から私どもの研究室で学び、卒業後、南相馬市立総合病院で初期研修を終えた。

▲写真:南相馬市立総合病院  

出典)南相馬市立総合病院HP

 

 当初、産婦人科医を希望していたが、新専門医制度では南相馬で専門医を取得することが出来ず、産科医を諦め、南相馬に残った。向上心があり、自立心が強い女性だ。

 

彼女は「何とかして、地元の方の役に立ちたい」と言うが、初期研修を終えたばかりの山本医師が、いきなり多くの患者の主治医となり、外来を担当するのは、相当な負担だろう。インスリンの導入から漢方薬の処方まで、教科書を調べ、先輩医師に尋ねながら、日々の診療を続けている。大町病院に異動し、彼女はすっかり逞しくなった。彼女にとって、飛躍の機会になればと願っている。

 

彼女の存在と対照的なのは、厚労省や医学会を仕切る大学教授たちだ。「医師派遣のシステムを整備することが大切」などと調子のいいことを言うが、私の知る限り、彼らの言うシステムは、ほとんど機能していない。今回などは、その典型だ。

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