再現なるか 94年“米朝衝突回避劇”
Japan In-depth / 2017年10月20日 9時2分
▲写真 “音響攻撃”により健康被害が続出したハバナの米大使館 出典:ウィキぺディアより
だが、この説の決定的な欠陥は米国とキューバ関係の現状認識が不足していることだ。2015年の米国とキューバの歴史的国交回復以後、両国間の往来が急増し、経済分野を中心に関係進展が見込まれたのは確か。ところが、今年6月トランプ大統領が対キューバ制裁の一部復活を発表したことで様相は一変。
さらに最近、在ハバナ米大使館職員が“音響攻撃”により相次いで身体の異常を起こした事件をめぐり、米政府がキューバの外交官を国外追放したことから、両国関係は急速に悪化。「国交回復後最悪の状態」(キューバ共産党機関紙「グランマ」)に陥ってしまった。
このような米・キューバ関係の現状を見れば、「キューバが米朝の橋渡しをすることは100%考えられない」(キューバの国連代表部筋)だろう。また、「トランプ政権がキューバの仲介を受け入れることも現状ではあり得ない」(日本の外務省筋)と言っていい。
■北朝鮮と太いパイプ持つリチャードソン氏
米朝対話の仲介という点で、日本のメディアがまだ取り上げていない、注目すべき米国の政治家がいる。民主党のビル・リチャードソン氏だ。リチャードソン氏はクリントン政権下で国連大使やエネルギー長官を歴任した後、2003年から8年間ニューメキシコ州知事を務めたほか、2008年大統領選予備選に立候補したこともあるベテラン政治家。
リチャードソン氏は1990年代前半から、米朝間のさまざまな問題について北朝鮮の党・政府幹部との交渉に当たってきた。1994年末、北朝鮮領空を侵犯したとして撃墜された米軍ヘリ・パイロットの解放交渉を行い、1996年にはスパイ容疑で北朝鮮当局に身柄を拘束された米民間人解放に成功。2003年、自身の地元ニューメキシコ州のサンタフェに北朝鮮代表団を招き、核問題について話し合った。
2005年、6か国協議で北朝鮮の核放棄に関する共同声明が採択された後、検証方法などをめぐって対立が激化した際、リチャードソン氏は北朝鮮の招きで平壌を訪問、打開策について協議。2010年には再び、北朝鮮の招待で平壌に赴き、6カ国協議の首席代表だった金桂冠外務次官と会談している。
2013年、米インターネット検索大手「グーグル」のエリック・シュミット会長の訪朝に同行したのはまだ記憶に新しい。今年6月、平壌で身柄を拘束されていた米人学生オットー・ワームビアさんの解放問題でも、北朝鮮当局に掛け合っている。2009年クリントン元大統領が訪朝、2010年にはカーター元大統領が2度目の平壌訪問を果たすが、北朝鮮当局とそのお膳立てをしたのも、リチャードソン氏である。
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