今後も起きうる北朝鮮による拉致
Japan In-depth / 2017年12月11日 10時56分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・北朝鮮木造船漂流が相次ぎ、日本海沿岸の市町村では拉致に対する不安が広がっている。
・拉致は北朝鮮体制の本質に根付いた行為であり、その目的は様々である。
・今後も機会さえあれば繰り返されると見ておかねばならない。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=37305で記事をお読みください。】
■北朝鮮の体質としての拉致
北朝鮮の木造船の漂着が相次いでいる。その中の一隻は、北海道沖合の小島に立ち寄り、漁業者の避難小屋にあった家電製品やバイクなどを盗み出していたことが明らかになった。日本海沿岸の市町村では、何か危害が加えられるのではないか、また拉致されるのではないかといった不安が広がりつつある。
▲写真)不審船通報を呼びかける看板の写真 2006年12月撮影 出典) public domain
北朝鮮では、資本主義国からモノを奪い取り利用するのは「革命家の義務」であり、そこに良心の呵責が入り込む余地はない。特に、かつて朝鮮半島を「蹂躪」し、「未だ反省していない」宿敵日本に対してはそうである。
拉致は、現独裁者金正恩の父である金正日が、1970年代から80年代に掛けての一時期、思いつきで工作機関に命じた作戦ではない。深く北朝鮮の体質に根差しており、あの体制の初期から行われていたし、またあの体制が続く限り、いつまた起こっても不思議ではない。油断は禁物である。以下、少し歴史的に整理しておこう。
▲ 写真)第二代最高指導者 金正日氏 出典)Photoby Joseph Ferris III
■拉致の歴史
拉致は、1948年の北朝鮮の建国以来一貫して続いてきた「政策」の1つである。その特徴から、大きく4つの時期に分けられる。
拉致の第1期は、建国から朝鮮戦争休戦までの、金日成が首領だった時代である。
▲ 写真)初代最高指導者 金日成氏 出典)Photob by Gilad Rom
金日成は本名金聖柱、第二次大戦中にソ連内務省管理下の極東警備司令部でスパイ教育を受け、日本の敗戦後、朝鮮半島北半部を占領したソ連軍政司令部によって、伝説の抗日英雄「金日成将軍」の名で権力の座に据えられた。金日成はその後、スターリン仕込みの粛正により、政敵を次々排除して独裁権力を固めていく。
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