1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

南相馬の医療崩壊 求められる改革

Japan In-depth / 2018年2月7日 10時32分

南相馬の医療崩壊 求められる改革

上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)

「上昌広と福島県浜通り便り」

【まとめ】

・多くの病院の経営が悪化しており、精神科を除く一般病院の利益率はマイナス4.2%だった。

・いわき市内の「ときわ会グループ」、その中核の常磐病院が急成長している。

・南相馬市の医療が崩壊の瀬戸際に。経営状態悪い市立総合病院は「救急医療」に特化すべき。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=38324でお読み下さい。】

 

 

 五十嵐北斗君という若者が、私が主宰する「医療ガバナンス研究所」でインターンを始めた。笑顔が素敵な好青年だ(写真1)。五十嵐君は中央大学商学部の4年生。今春、卒業予定だ。実は、彼には大学生とは別の顔がある。「trimy」というベンチャー企業の社長だ。医学生向けの初期臨床研修向けのマッチングサイト「ホクトレジデント」を運営している。ベンチャーキャピタルから資金を調達して立ち上げたらしい。私のところに来たのは、サイトの作り込みについて相談するのが目的だ。

 

(写真1)筆者(右)と五十嵐北斗君(左)。医療ガバナンス研究所にて。
🄫上昌広

 

 彼は研修医のマッチングについて随分と調べていた。名門病院はほぼ知っていたし、研修医が抱える問題も熟知していた。商学部の学生のレベルを超えていた。私は彼の経歴を聞いて納得した。世界で初めて全身麻酔を用いた手術を成功させた華岡青洲の縁戚だという。1966年に有吉佐和子が発表した『華岡青洲の妻』で描かれた一族だ。親族は北海道で病院を経営している。五十嵐君は医者に囲まれて育ち、病院経営を肌感覚で知っているようだ。

写真)華岡青洲 
出典)Public Domain

 

 では、彼にどのようにアドバイスしたのだろうか?私は「君のサイトで病院の経営状態を紹介したらどうだろう」と勧めた。幸い、大学病院をはじめ、多くの大病院が財務諸表を公開している。大学生が就職活動をする際、もっとも注目するのは企業の経営状態だろう。慢性的な赤字で、改善の目途がたたない企業に就職するのは、よほど奇特な学生だけだ。ところが、医学生の間で、このことは議論されない。

 

 我が国では診療報酬は、厚労省が全国一律に決めている。社会保障費を抑制するため、診療報酬が据え置かれ、多くの病院の経営が悪化している。厚労省が発表した2016年度の「医療経済実態調査」では、精神科を除く一般病院の利益率はマイナス4.2%だった。前年度より0.5ポイント悪化していた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください