真夏の東京五輪、見直すべき
Japan In-depth / 2018年2月17日 12時0分
8日に始まった平昌オリンピックではそれが如実に競技時間に表れている。例えば、フィギュアスケートは全ての種目の開始が午前10時台で、9日の団体男子ショートプログラムは有力選手の転倒が相次いだ。宇野昌磨選手は「あれだけたくさん失敗するのは初めて見た」と言っている。この時間になったのは、フィギュア人気の高い米国が夜で視聴率が取れる時間に放送を合わせているからだ。
▲写真 韓国のキムヨナ選手(2014年ソチオリンピック・女子フィギュアスケート) Flickr:Republic of Korea
また、ジャンプ男子ノーマルヒルの決勝は10日午後11時15分から始まり、決勝の2回目が終わったのは午前0時過ぎだった。気温は氷点下12度で、視察していた日本政府関係者も耐えきれずに競技終了を待たずに立ち去った。葛西紀明選手は「こんなの中止でしょう、と心の隅でちょっと思った。ジャンプ台の上で寒さに耐えていた」と言っている。これも米国同様にジャンプの人気が高く、自国の選手が活躍する欧州が夕方で視聴率が取れる時間に合わせている。
▲写真 PyeongChang Alpensia Flickr:Republic of Korea
IOCは「アスリートファースト」を掲げているが、実態は巨額のテレビ放映権料が発生する欧米に合わせ、実態がともなっていない。国際映像を制作して全世界に供給するためIOCが設立した五輪放送サービス(OBS)のディック・パウンド委員長は「競技日程はテレビ視聴者を最大化するためにデザインされている」と言っており、東京オリンピックでも同様の状況になると思われる。
▲写真 五輪放送サービス(OBS)ディック・パウンド委員長 flickr : US Embassy Canada
JOCはサッカーなど屋外スポーツの競技開始時間を早朝や夕方にするなどの対応をとるほか、マラソン競技などでは道路に熱を吸収する遮熱舗装など対策を検討中といわれている。しかし、何はともあれアマチュアスポーツ、オリンピックにとって最も良い季節があるのに、欧米のプロスポーツを中継するテレビ局に遠慮してアスリートや観客に過酷な季節を強いることになるのだ。スポーツ本来のあり方に反する選択だという批判が出てくることだろう。
過去の例では7~8月のオリンピックを避け9~10月に実施した例は、シドニーオリンピックであった。選手や観客に迷惑、負担をかけないようもっとも良い季節を選ぶのが主催国の礼儀とアマチュアリズムの精神であり、最高のもてなしとなるのではなかろうか。
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