暴露本から見えないトランプ像
Japan In-depth / 2018年4月6日 12時46分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・トランプ暴露本の日本の識者の分析も皮相。
・同書のトランプ政権の政策決定プロセス分析は不十分。
・著者ウォルフはその後評価を落とし凋落。
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■ トランプ支持の理由が不明確な暴露本
週刊文春4月5日号の「私の読書日記」で評論家の立花隆氏がマイケル・ウォルフ『炎と怒り トランプ政権の内幕』を取り上げ、次のように書いている。
▲写真 マイケル・ウォルフ『炎と怒り トランプ政権の内幕』 出典 Amazon
▲写真 マイケル・ウォルフ氏 出典 ウィキぺディアコモンズ photo by Andrew Dermont
「日本語訳が単行本の形で出版されたのはつい最近のこと。実際にその本を読んでみると、なんでこんな人がアメリカの大統領になれたのだろうと、あきれるような人物像が、広範な取材にもとづいてよく書かれている。……ますますトランプをどうしようもない(人間的にも政治的にも)男と思う人が大半だろう」。
これが日本の「識者」の標準的反応かもしれない。私は仕事柄、数か月前に原書(Michael Wolff, Fire and Fury: Inside the Trump White House, 2018)を読み、トランプ政権の動向を日々追っているが、立花氏のような見方には、皮相の感を覚えざるを得ない。
▲写真 立花隆氏 出典 立花隆公式HP
トランプが「こんな人」であることは、30年前からアメリカの有権者には周知である。「どうしようもない」金持ちはアメリカに掃いて捨てるほどいる。ポピュリスト(大衆迎合屋)はもっと多い。説明すべきは、なぜその中でトランプだけが大統領になれたのか、保守派の間で政治家として一定の評価を得つつあるのかだろう。
例えば、軍事オプションを含む「最大圧力」戦略を掲げるその対北朝鮮政策は、歴代のどの政権よりも効果を上げている。強硬派で鳴らすボルトン元国連大使の大統領安保担当補佐官への起用(4月9日就任予定)なども、批判を恐れぬトランプならではの人事と言える。以下、『炎と怒り』を改めて解剖してみたい。
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