イラク日報隠蔽問題の本質
Japan In-depth / 2018年4月20日 2時45分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・空自イラクPKO日報隠蔽問題、本質を掴んでいない報道が多い。
・自衛隊は日報を1年で破棄しているというがあり得ない。
・防衛省や自衛隊は機密以外の情報は原則開示の体制構築が必要。
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陸自のみならず、空自のイラクPKOの日報の隠蔽が大きな話題になっているが、本質を掴んでいない報道が多い。
自衛隊は日報を1年で破棄しているというがあり得ない。そもそもこの種の日報はPKOの基礎的な資料であるだけではなく、次に行うPKOの重要な資料でもある。軍隊の常識でいえばこれらの資料を破棄することはあり得ない。これは複数の中央即応集団司令部勤務経験者も明言している。つまり自衛隊内部で保存されていることが当たり前で、それがどこにあるかもはっきり分かっていたはずだ。それが今頃「発見」されるなどあり得ない話だ。恒久的に保管されるのが常識だ。
仮に日報の類いを組織的に抹殺したのであれば、軍事組織としては全くのアマチュアであると言ってもいい。自衛隊は軍隊ではなく、単なる行政機関だからという言い訳は通用しない。
▲写真 イラク人道復興支援活動・浄水場の施工状況を確認する隊員 出典 防衛省 陸上自衛隊公式HP
恐らく自衛隊はその重要性を理解している。日報は部隊や旧中央即応集団司令、あるいは研究本部などに保存されており、陸幕に提出したものは「破棄」しても、部隊に残しておく。「破棄」したことにすれば外部に公開する必要は無い。そのようして政治家や、国民などの「身内以外」の外部を騙して構わないというモラルハザードが蔓延しているのだろう。防衛省、自衛隊の情報開示に対する姿勢は民主国家の国防省、軍隊よりも独裁国家のそれに近い。
廃棄されているのは日報だけではない。複数の医官がイラクPKO参加隊員の当時のカルテは個人情報保護のためと称して破棄されている可能性が高いという。軍隊では戦時平時を問わず、将兵のカルテは衛生の基礎資料となるのでまず破棄しない。例えば第一次世界大戦の戦死者の研究などにこれらのカルテは必要不可欠だ。防衛省あるいは自衛隊がこれらのカルテを破棄したのであれば極めて奇異である。イラク派遣後に少なく無い派遣隊員が爾後に自殺をしているが、そのような因果関係を調査するための基礎資料を「証拠隠滅」のために破棄したと疑われて仕方あるまい。
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