停電を人災と呼ぶ大新聞の非論理性
Japan In-depth / 2018年9月21日 16時4分
山本隆三(国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授)
【まとめ】
・北海道停電について、朝日・毎日、経済性重視した大型発電所依存の北電による「人災」と報道。
・コストや電気代上昇への懸念、効率的な燃料確保など、電源分散を不可能にしていた要素無視。
・反原発の主張ありきの報道。
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北海道で発生した停電に関し、朝日新聞と毎日新聞は「巨大な発電所に頼る構造が停電を招いたのは、東日本大震災時の福島第一など多くの原発が止まり計画停電を招いたのと同じ。電源を分散していれば停電を避けられた」との記事を掲載した。
写真)9月14日、記者会見で謝罪をした、北海道電力の真弓明彦社長 出典)北海道電力
朝日新聞は、9月13日付「北海道を闇に包んだブラックアウト 空白の17分に何が」で、「一つの発電所に電力の多くを依存するという北海道電力の構造的問題を浮き彫りにした」「巨大な発電所に頼る構造は北電に限らない。東京電力は東日本大震災で福島第一など多くの原発が止まり、計画停電を余儀なくされた。経済性を優先するあまり、電力需要や送電網の規模が小さいのに出力が大きい原発などを集中的に抱える電力会社に同じ課題を突きつけている」としている。(参照記事:朝日新聞「北海道を闇に包んだブラックアウト 空白の17分に何が」9月13日)
毎日新聞も9月12日付「原発依存が招いた”人災“」で「停電は電気を供給する北電に責任があり想定外ではなかった。今回の原因は、長年にわたる原発依存の経営が招いた人災だった」「目先の経営効率を優先し大規模一極集中型の原子力発電を推進したツケが、いま噴出している」とし「北電は電源の多様化や発電所立地の分散化に限りある経営資源を投じるべきだ」と朝日とほぼ同内容の記事を掲載している。(参照記事:毎日新聞「原発依存が招いた”人災“」9月12日)
両記事の主張を簡単に言えば、「コストがかかってもよいから、小規模電源をあちこちに建設しておくべきだった。そうしなかったのは北電の責任」ということだが、電気という生活と産業に大きな影響を与える商品において、コストを考えずに万が一に備えて分散だけを行うことはあり得ない。そんなことを行っている電力会社はどこにもない。あまりに不思議な主張だ。
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