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仏、「貧困の連鎖」断ち切れるか

Japan In-depth / 2018年9月22日 19時1分

フランスの学校はどちらかと言うと、落ちこぼれができやすいシステムとも言えます。なぜなら、バカンスが長い分、学校教育時間は短く、その代わり宿題を多く出すことで学習量を補ってきました。宿題が多いことは、家庭で勉強する時間が長くなると言うことですが、そういったシステムでは家庭で勉強を教えることができたり、子供自身の実力がある子には問題ありませんが、家庭で勉強を教えることができず、自力で勉強ができない場合は、まったく機能しません。


特に、貧困家庭は、両親が学力的にも高くない場合も多い上、肉体労働的な仕事で疲れてたり、物理的に時間がないなど、子供の勉強をみてあげられないケースがとても多くなります。そのような環境で、自分の力だけで乗り切れない子供は、どんどん、どんどん、落ちこぼれていくことになることが多いのです。特に苦労していたのは、当然ながらもともと母国で十分な教育を受けていない移民たちの家庭。フランス語自体が十分でないであろう家庭では、十分な子供の教育ができないことは当然のこととも言えます。


この結果、教育的、社会・経済的ハンディを負った生徒が特定の地域に集中するようになり、たいへん大きな学校間格差が生まれることにもつながりました。そればかりでなく、学区ごとに指定された公立中学校を回避して、他の学区の公立校、または学区の制約を受けない私立校に子どもを通わせる学校選択行動が、学校間格差をより大きく広げ、特定社会階層・人種の隔離状況をも作り上げたのです。


もちろん、フランスはこの20年、教育改革を行い続け、こういった状況の改善を目指してきています。ZEP(教育優先地域)を設け学力の向上を目ざしたり、宿題を減らし学校で授業するように変更していったり、社会分断を解消するためにオプションと言う事実的な成績による選抜クラスを廃止し、成績に偏ることなくクラスに均等に生徒を振り分ける、また週4日の授業を、週4日半にするなどの改革が行われきました。しかし、特定地域との他の学校の格差、学校内での経済背景による格差の解消は思うようには成功していないと言わざる得ません。


2015年のPISA(注1)の社会経済的背景が成績に与える影響の調査において、「社会経済的に不利な状況を打ち破ることに成功し、世界全体の上位25%の成績を納める」割合は、OECDの平均値が29%なのにもかかわらず、フランスは、それを下回る27%となっており、社会背景が学力に影響を与えていることを垣間見ることができます。ちなみに、日本は社会経済的に恵まれない生徒の2人に1人(49%)が不利な社会経済的環境を打ち破り高い成績をおさめると言う結果が出ており、フランスより日本の方が社会背景が学力には影響しないと言えるのではないでしょうか。


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