候補者討論会その2”安倍首相5年以内の普天間返還約束”は事実か?
Japan In-depth / 2018年9月29日 22時10分
事実・証拠
(1) 防衛省のホームページに仮訳が掲載されているSACO合意(1996年12月)の内容を確認すると、普天間飛行場(宜野湾市)など、嘉手納飛行場(嘉手納町など)以南の返還も多く含まれるが、北部訓練場(国頭郡)など、嘉手納以北の返還も明記されている。
他方、佐喜真氏が言及した「統合計画」とは、日米両政府が2013年4月5日共同発表した「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」を指すとみられる。ここで、嘉手納飛行場以南の土地の返還が確認された(外務省HP)。
(2) キャンプキンザー(=牧港補給地区)については、SACO合意で国道に隣接する土地約3ヘクタールの返還と、施設の同基地(の残余部分)内への移設が明記されている。「統合計画」でも確認され、今年3月末、返還が実現した(防衛省HP参照)。
(3) 軍港(=那覇港湾施設)については、SACO合意で県内の浦添埠頭地区(約35ヘクタール)への移設が明記されている。「統合計画」でも確認され、翁長雄志前知事も合意容認を表明したが(沖縄タイムス2016年12月10日)、現在も返還が実現していない。
判定:正確
日米両政府のSACO合意や統合計画でキャンプキンザーや那覇軍港の県内移設を含む「嘉手納以南の基地返還」を合意したことは事実である。
【検証対象④】
言説内容
(玉城氏)普天間の閉鎖返還、これは来年の2月が5年以内の運用停止の期限ですから、まずそれを政府に求めます。一日も早く運用停止せよと。政府の約束したこと、安倍総理は、自分ができることは全力でやるとおっしゃった。
事実・証拠
普天間飛行場の返還期限は、当初SACO合意で「今後5乃至7年以内に、十分な代替施設が完成し運用可能になった後、普天間飛行場を返還する」とされていた(防衛省HP)。
つまり、遅くともSACO合意から7年後の2003年までに返還されるはずだったが、この合意は「十分な代替施設が完成し運用可能になった後」という条件付きだった。その代替施設が未完成ということもあって、普天間飛行場の返還は実現していない。
「普天間の5年以内の運用停止」の「約束」とされるものの経緯をまとめると、次のとおりとなる。
(1) 日米両政府は2013年4月5日、嘉手納以南の土地の返還計画を共同発表し、「2022年以降」の普天間飛行場返還に合意した。
(2) 一方、沖縄県の仲井真弘多知事は2013年12月17日、首相官邸で行われた沖縄政策協議会で「普天間の5年以内の運用停止」を要請(沖縄タイムス参照)。25日にも官邸で再要請し、安倍首相は「移設されるまでの間の普天間飛行場の危険性除去が極めて重要な課題であるという認識は知事とまさに共有している」と述べていた(首相官邸HP)。2日後の27日、仲井真知事は辺野古移設工事の承認を発表。会見で「普天間飛行場の5年以内の運用停止に政府として取り組むとのことだ」と説明し、記者の質問に「政府がしっかり取り組んで5年以内に県外移設をし、今の飛行場を運用停止すると総理から確約を得ている」と答えていた(琉球新報2013年12月28日、知事発表全文・一問一答より)。
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