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ラオス 中国のダム建設で環境破壊も

Japan In-depth / 2018年9月30日 11時0分

ラオスは資源に乏しい山岳国だ。日本の本州とほぼ同じ面積を持っているが、そのうちおよそ80%が山地となっている。タイとの国境線となっているメコン河の東部にわずかな平野があり、農業が営まれているほか、林業もさかんだ。近年は金や銅、ボーキサイトなどの鉱床が発見されているが、開発はまだ進んでいない。



▲写真 ベトナムのメコンデルタ。メコン河は恵みの象徴でもある ©室橋裕和


そんなラオスで好調な産業が「売電」なのである。メコン河やその支流などを利用した水力発電ダムを次々に建設、電力を周辺諸国(おもにタイ)に輸出している。その発電量は6390.9MW(2016年)に達しており、「東南アジアのバッテリー」ともいわれている。


2016年には中国によって、北部ルアンパバン県にナムカン3ダムが建設されるなど、新たに4つのダムが稼動をはじめた。国内には42か所の発電施設があり、さらに各地で建造が続く。中部のボリカムサイ県では、関西電力によってナムニアップ1水力プロジェクトが進む。やはりメコン河の支流であるナムニアップ河に、発電容量計29万kwの発電所を2基、建設する。電力はこちらもタイへと輸出される。大林組やIHIインフラシステムなどが計画に参加し、運転開始は2019年1月の予定。このダムの総貯水容量は約22億立方メートルで、日本最大級である黒部ダムの10倍以上という規模になる。



▲写真 建設中のナムニアップ1水力プロジェクト 出典:関西電力



▲写真 ラオスではまだまだ河とともに生きる昔ながらの暮らしが残っている ©室橋裕和


莫大な発電量を持つラオスでは電気料金は安価で、家庭用の場合1kw/hあたり0.05〜0.08米ドルだ。東京0.16〜0.25米ドル、プノンペン0.15米ドルと比べてみるとその安さがわかる。


工業用の電力も同様で、1kw/hあたり0.078米ドル。東京0.12米ドル、プノンペン0.21米ドルよりはるかに安い。大電力を必要とする工場にとっては大きな差となり、これを「売り」にして外資の製造業を誘致する動きもある。日系企業はいまのところ、首都ビエンチャン郊外のビタ・パーク経済特区、南部サワンナケートのサワンセノ経済特区などに少数が進出するに留まっている。しかし今後は、タイやベトナム工場との分業体制が進むと見られ、ラオスの役目も大きくなるかもしれない。発電を軸にしたラオス経済は、この3年間の平均GDP成長率が7%を超えた。まだまだ後発国ながら、山地に刻まれた川筋はこの国の未来でもあるのだ。


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