ラオス 中国のダム建設で環境破壊も
Japan In-depth / 2018年9月30日 11時0分
そしていま、ラオスに対して大きな影響力を持っているのは中国である。発展が続いているとはいえ国力の弱いラオスは、国際会議やスポーツの大会などの会場建設も難しい状態で、そこへ中国が手を貸した。例えば2009年にビエンチャンで開催されたSEA GAMES(東南アジア競技大会)のスタジアムは中国が建設したものだ。2012年のASEM(アジア欧州会合)で使われた迎賓館とコンベンションセンターも同様だ。その見返りに、中国はビエンチャン中心部の開発権を得たといわれる。こうした手法でラオス経済に深く食いこんでいるのだ。
北部のタイ・ミャンマー国境に位置するメコン河沿いの一帯は、99年間の予定で中国に租借され、ジャングルを切り開いてカジノやコンドミニアムが建設されるなど乱開発が続いている。「国土の切り売り」と国内外からの批判も強い。
そして中国は、メコン河とその支流域で、複数のダム建設計画を進めている。中国国内の電力需要をまかなう目的と、「一帯一路」構想により周辺国への影響をより強めるためだ。
しかし急激な開発によって、環境破壊を引き起こしている。水質汚濁だけでなく、大量の水を人為的にコントロールすることで、河に生息する魚たちは産卵場所を見失い、漁獲高が減るといわれている。すでに「メコンの主」でもあったメコンオオナマズはその数を大きく減少させ、ワシントン条約の保護リストに入っている。カワゴンドウ(イラワジイルカ)も絶滅の危機にあるといわれる。このまま計画が進めば、2040年までに流域の漁獲高は半減するという試算もある。
中国は自国の領内、雲南省やチベットを流れるメコン河にもダムを多数建設しており、さらに増やす計画だ。これにより下流で起きているのが、大規模な「水不足」なのである。
▲写真 中国電建と中国水電によるダム開発を示す看板、ラオス中部にて ©室橋裕和
ラオスからメコンを下っていくとカンボジアに至るが、近年ではメコンから引きこむ農業用水の減少に悩まされている。雨季の季節にはメコンが氾濫し、これが栄養分たっぷりの農地をもたらしてくれるのだが、水量は年々減っている。
さらに深刻なのはベトナムだ。メコンが無数の支流に分かれて南シナ海に注ぐベトナム南部のデルタ地帯では、塩害が発生している。河の水量が減り、水位が低下したことで、海水が流れ込んできてしまっているのだ。
▲写真 ラオス南部サワンナケートからメコン対岸のタイを望む、豊かなように見えるがメコンの水量はだんだん減っている ©室橋裕和
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