ラオス 中国のダム建設で環境破壊も
Japan In-depth / 2018年9月30日 11時0分
その先駆けともいえる存在が、ラオス中部にある。首都ビエンチャンから車で北上することおよそ3時間。国道13号線を東に折れ、しばらく進むと、タラートという小さな街に出る。そこからナムグム河に沿ってのどかな山道を走っていくと、やがて巨大な構造物が見えてくる。日本のODA(政府開発援助)のもと、世界銀行などの融資によってつくられたナムグム・ダムだ。
▲写真 日本によって建造されたナムグム・ダム 周囲はささやかな公園となっておりダムを見上げて散策できる ©室橋裕和
ラオス初の水力発電所でもあり、日本公営や日立など数多くの日系企業が関わり、1968年から建設が進められた。当時ラオスは内戦下にあり、工事は難航を極めたが、1971年に完成。このダムによって、ラオスは売電という新しい産業を手にすることができたのだ。その後、日本の援助によってたびたび修復や増設が行われてきたが、現在も発電容量を増やすための工事が行われており、2020年までに完成する予定だ。
▲写真 ナムグム・ダムは運転開始以降、その発電量を増すための工事を重ねている ©室橋裕和
ナムグム・ダムは、日本とラオスの初の合作映画『ラオス・竜の奇跡(主演・井上雄太)』の題材にもなっている。現代のラオスを生きる女性ノイが、1960年代にタイムスリップしてしまう。そこで出会ったのは、ダム建設のためにラオスを訪れていた日本人技師、川井だった。川井は地元住民の反発に遭いながらも、ダムによる発電がいかにラオスの将来に役立つかを必死に説いて回るのだ。その姿にノイも打たれ、少しずつ惹かれていく。
▲写真 たくさんの観光船が停泊するナムグム湖のほとり ラオス人たちはピクニック感覚で遊びに来る ©室橋裕和
現在のナムグム・ダムは、すっかり平和になったラオスの人気観光地でもある。ダム建設によって生まれた巨大な湖が広がっているのだ。船をチャーターして、料理や酒を持ち込み、湖を遊覧しながら宴会をするのがラオス人には人気だ。湖畔にはいくつかホテルもあり、ビエンチャンからの小旅行にはちょうどいい。日本の国際援助とエネルギー技術が、そんな景色を生み出したのだ。
▲写真 ダム建設によってできたナムグム湖は、まるで鏡のような湖面の美しさが印象的 ©室橋裕和
この発電ビジネスに旨味を見出したラオス政府は、諸外国の支援によるダム建設を次々に進めるようになった。事故を起こしたセピアン・セナムノイ・ダムもそのひとつだ。
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