三人三様 元横綱の話 スポーツの秋雑感 その2
Japan In-depth / 2018年10月20日 0時5分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・様式美、品格を無視した相撲は単なるデブの取っ組み合い。
・甘やかされた輪島、相撲界改革で提言した形跡のない貴乃花。
・人気があればよいとの発想からの脱却、相撲道の原点回帰が必要。
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大相撲の元横綱・輪島大士(わじま・ひろし。本名は博)氏が亡くなった。享年70。意外に若かったのだな、というのが、報道に接した私がまず感じたことであった。
1948年生まれの輪島氏が、左下手投げを武器に(この技を得意とする力士は大成しない、というジンクスがあったそうだ)台頭してきたのは、私が小学6年生から中学生だった頃で、1973年五月場所の後(私の高校入学直後)に横綱昇進を果たしている。12歳の子供の目には、22歳の青年は立派な大人と映るのだが、実際の年齢差はたかだか10歳だったわけだ。
私の周囲には、輪島ファンを公言する少年も幾人かいたが、私自身は相撲自体にあまり興味がなかった。我ながらひねくれたガキだったので、まあ、この表現はご勘弁いただくとして、「デブが裸で取っ組み合ってるの見て、なにが面白いんだ」などとうそぶいていたのである。
その後、自らが武道を学ぶようになったので、関心を持つようになり、立ち技では恐るべき格闘技であることも理解できたのだが、輪島関はと言えば、1981年に引退して花籠部屋を継ぎ、後進の育成に当たる親方となっていた。つまり、私は「黄金の左」をリアルタイムでは見ていない。
その後の経緯はよく知られる通りで、年寄株(相撲部屋の経営権と思えばよい)を親族の借金の担保にしていたことが発覚し、廃業に追い込まれた。一時期はプロレスもやっていたが、30代も後半になってからの「再入門」で、芽が出なかったようだ。
廃業の経緯について、親しい記者には、親族を助けるためだったから後悔はしていない、などと語ったこともあるが、もともと入門当初から派手な生活ぶりは有名で、要は自分の金でなんとかすることができなかったのである。
年寄株の一件が発覚した際、相撲界のみならず世間一般からも「前代未聞の不祥事」であるとして非難囂々だったが、学生横綱として鳴り物入りで入門した際には、部屋住みでなく日大の寮から「通勤」し、ちゃんこ番も免除するという特別待遇を与え、言わば新卒者をいいように甘やかした相撲界には、なんの責任もないと言うのだろうか。
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