「変わるアジアのパワーバランス」 Japan In-depth創刊5周年シンポ その1
Japan In-depth / 2018年12月30日 10時23分
続いて、各登壇者による問題提起が行なわれた。
中谷元(なかたに・げん)衆議院議員(自民党 元防衛大臣)は 「アジア極東圏の安全保障」について。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
「(JID創刊時の2013年と比べ)安全保障情勢が激変し、現在政府は防衛計画大綱の見直し作業を行っている。与党としても政府から報告を受け、防衛大綱を作成、閣議決定する。機動防衛力・統合力などの変遷に沿って、安全保障情勢に合わせて大綱をつくっていく。
わが国周辺の安全保障情勢の変化について言えば、北朝鮮の核ミサイル開発、6回の核実験、ロフテッド発射、複数同時発射、移動式発射台、潜水艦発射など、北朝鮮の技術が急速に上がってきたことがあげられる。中国も国防費を30年間で51倍に増やしている。東シナ海・南シナ海への進出を強めているが、ロシアがウクライナからクリミア半島を占領した際にとった「ハイブリッド戦」、つまり正規軍ではなく非正規軍や相手国の兵力も使った巧妙な作戦で進めている。特に東シナ海では、中国の「海警」が人民軍の指揮下に入り、軍事の系列で運用されているが、「海警」は人民警察、警察力という位置づけだから、わが国は海上保安庁が対処する。しかし、いつこれが軍になるかわからない。また、偽装漁民・漁船も警戒が必要だ。日本の水産庁にあたる「漁政」がこういった漁船をコントロールするが、これは軍事組織の系列に入った。日本は中国の巧妙なハイブリッド戦に備えなければならない。
南シナ海はこの5年間で軍事基地化され、アメリカの自由航行作戦に対して中国船が接近したことで非常に緊張が高まっている。
国際社会は、宇宙・サイバーの新たな領域を(重視している)。この点はNATOが非常に先進的に対応していて、武力攻撃であるのか、国際法上どうなのか、あるいは対応の仕方等について4年前にタリン・マニュアル(=「サイバー戦に適用される国際法に関するタリン・マニュアル」)を作った。米国・ロシア・中国もサイバー支援に力を入れる時代になっている。サイバーテロがあり、国家対国家の構図に加えてホームグロウン型の国際テロの脅威がある。アメリカは、ペンス副大統領の演説に象徴されるように、中国・ロシアに対して新たに脅威認識を持って覇権主義に対峙していく戦略だ。
もう一つはアジア太平洋戦略。安倍総理が以前(2012年)、ダイヤモンド構想というものを打ち上げているが、日本・インド・オーストラリア・アメリカ、このインド太平洋地域の協力関係を講じるという戦略だ。
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