「変わるアジアのパワーバランス」 Japan In-depth創刊5周年シンポ その1
Japan In-depth / 2018年12月30日 10時23分
そのような背景を踏まえ、アジアのパワーバランスを改めて考えるというのは日本の国のより良いあり方を考える時、非常に良いアプローチだ。まず、米中関係の大枠について3つのポイントを話す。2001年から2018年の間の米中関係の変化はものすごく大きい。
2018年の11月現在の米中関係、1つ目のポイントは米中の対立の規模の巨大さだ。国際情勢を根底から揺るがす規模の大きさだ。世界経済面で第1のGDP、第2のGDP。軍事力でも第1、第2の大国だ。米中の対立、駆け引きによって日本と朝鮮半島の安全や安全保障が根底から揺さぶられてしまう。今の国際関係激動の最大要因はやはり米中関係だ。その米中関係が今極めて険しい厳しい状況になってきている。
2つ目は米中関係の厳しさ、険しさには長い歴史、深い根があるということ。アメリカと中国が国交樹立したのはほぼ40年前の1979年。それ以前の第二次世界大戦時は中国とアメリカは手を取り合って日本と戦った。しかし、その後すぐに1950年に朝鮮戦争が起き、今度はアメリカと中国が朝鮮半島で血みどろの激戦を展開したという歴史がある。それを乗り越えて79年にやっと国交を結んだ。それ以来のアメリカの中国政策というのは簡単に言うと関与政策、すなわちエンゲージメント政策。これは、私たちの元へいらっしゃい、仲良くしましょう、中国はまだ弱く貧しいけれど強く豊かにするために我々は援助しますよというもの。そうすれば中国はアメリカや日本など民主主義陣営に近い形になり、我々の側、すなわちアメリカが中心となって築いてきた戦後の自由民主主義の国際秩序に中国が普通の一員として入ってくれるだろうと期待していた。これが関与政策だった。
ごく最近になってこの政策が失敗だったとの認識が広がり、中国はアメリカの期待していた方向に全く動いていないという認識になってきている。今トランプ政権の周辺では「今までの対中政策がエンゲージメントであったとすれば、今からやる事はディスエンゲージメントである。今まであった絆を外していく、遠ざけてゆく」と言われている。カップリングは人と人を結びつけるときに使う言葉だが、今アメリカが中国にやろうとしているのはディカップリングだと。米中の絆というのは、いろいろな面で対立しながらも協調することが多かったが、これをやはり減らしていってしまうということ。
何故かというのは後ほど説明するが、こういう状態になったその根底には、自由民主主義のアメリカと一党独裁体制の中国という全く違う政治体制がある。今まで仲良くやってきたことが不思議なわけで、今それが変わってきた原因は本来の基本的な政治の価値観や体制の違いによるものだ。そういうことはあまり言わずに仲良くしようとやってきたが、それがあまりうまくいかなかった。
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