「変わるアジアのパワーバランス」 Japan In-depth創刊5周年シンポ その1
Japan In-depth / 2018年12月30日 10時23分
今度の大綱の方針のキーワードは4つ。
1つは「クロスドメイン」。すなわち多次元横断防衛構想。宇宙・サイバー・陸海空自衛隊別々ではなく、それぞれクロスドメインを行うということ。
2つ目は「列島線防衛」。これは中国の軍艦や航空機が沖縄と宮古島の海峡を抜けて頻繁に太平洋に出てくることに対して、どう対応していくかということ。
3番目はやはり同盟国・友好国との連携強化、「コスト・インポージング(Cost-Imposing)」。日本語で費用負荷。抵抗力を持って相手にコスト、負荷をかけて力を消耗させることで攻撃を阻止すること。
4つ目は「予算」。いくら立派な防衛大綱を作っても、5年間の中期防の予算は約25兆円に制約されている。1%枠は維持されているが、これだけのことをやるには予算も必要だ。
一番大事なのは実際に自衛隊が動ける体制をつくること。後方の整備や弾薬の補給、人の管理など所要のことをしていかなければならない、というコンセプトで考えている。同時に、従来の日米同盟の延長線ではなく、日本が主体的にできることをできるだけ増やしつつ、同盟を強化していく。特に抑止力、対抗力の面で日米のあり方について検討している」と述べた。
古森義久氏(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)は「米中関係は今」というテーマで話した。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
「私は国際報道を長くやってきた。ワシントンが一番長く、ベトナム・中国に2年、ヨーロッパも見てきた。我々が一番関心があることは、日本の平和をどうやって守っていけばよいのか、ということ。これまでの日本の中での議論、特にマスコミの傾向は国の外を見ないものであった。平和というのは日本の国内の治安が良いということではなく、周りの国との関係において、戦争がない、安定している状況を指す。平和を考えるとき、これを崩そうとする国家群あるいはテロ組織を見ることが一番重要なことだ。
だが、日本ではマスコミも国会も、日本の平和を乱すどのような脅威があり、どんな能力があるのかということを正面から論じることが少ない傾向にある。どこかの国の軍備が異常に強力になっていて、日本を射程に入れる中距離ミサイルが無数にあるという状況になっても、その国がどこの国で、どういう能力を持っているのかということをなるべく具体的には言わない方が良いと考える傾向がある。それを言うとかえって相手を刺激してよりまずい状況を招くという感覚がある。しかし、やはりあるものはあるんだということを認めていくことが安全保障、平和を考えるときの一番最初の作業なのではないか。それが非常に欠落している状況が戦後続いてきた。
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