変わるアジアのパワーバランス Japan In-depth創刊5周年シンポ その5
Japan In-depth / 2019年1月14日 2時12分
安倍: 島田氏に伺う。拉致問題は非常に重大だ。このような流動化している環境下で、日朝首脳会談の必要性についてはどうか。
島田: 北朝鮮はまずアメリカを見ている。安倍政権に関しては来年の参議院選挙で惨敗すれば安倍降ろしが自民党内で始まるかもしれない。そのようなことを期待しながら北朝鮮はアメリカからの締め付けが厳しくなればやはり金を取れるのは日本しかないということで日本に寄ってくるとは思う。韓国について言えば、いま文在寅は全方位土下座外交を展開している。北朝鮮に土下座し、アメリカに対しても自由貿易協議で韓国はすぐに受け入れて、ほぼ丸呑みした。中国に対しても土下座的だ。日本に対しては少し違うが、徴用をめぐる最高裁判決では、司法が決めてしまって韓国政府としては困っているという顔を見せた。
日本政府として、国際司法裁判所(ICJ)に提訴するべきだという話が出ているが、これは非常に危ない。韓国は受けないだろうという人がいるが、文在寅は国内で八方塞がりだから、ICJに投げてしまおうという判断をするかもしれない。その場合、日本は理屈の上で必ず勝つケースだと外務省は言うが、4年前にオーストラリアが日本をICJに訴えた捕鯨訴訟では、日本は負けた。
負けた背景にはICJの裁判官の構成がある。ICJの裁判官は15人で安保理常任理事国から必ず1人入る仕組みなので中国人、ロシア人が必ず入る。捕鯨の場合では、日本人判事は1人入っていた。そして訴えたオーストラリア側から特任判事が1人入り、計16人の構成だった。オーストラリアは捕鯨問題の論客を入れて来た。ICJはヨーロッパ・リベラルが多く、10カ国ぐらい。オーストラリアも入れて反捕鯨国は11カ国。ロシア、中国も反日に回り、結局16人中12人が日本の主張に異を唱え、日本が敗訴した。今回も韓国が訴えた場合、韓国人の特任判事も入る。しかも歴史問題の論客だ。日本人判事は東大の国際法の先生で学者としては立派な人だろうが、このような問題の論客と言うには程遠い。そしてロシア人、中国人の判事はどちらの肩を持つかは言うまでもない。ヨーロッパ・リベラルの人々は日本はひどい侵略をやったのだろうという単純な歴史観を持っているから、私は基本的に日本が不利になると思う。
朴: 文政権の状況は相当八方塞がりです。望みは金正恩がソウルに来ること。これで一点突破しようとしている。それ以外はもう経済もだめ。与党はいま分裂がすごい。次期大統領候補と言われていた安熙正(アン・ヒジョン)が#MeToo(ミートゥ)すなわち女性問題でアウトになった。京畿道知事の李在明(イ・ジェミョン)も実兄を強制的に精神病院に入院させた容疑で立件された。
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