早野叩きで終わらせていいのか~被ばく論文の意義と実相~
Japan In-depth / 2019年2月2日 18時0分
政府は放射線医学総合研究所や日本原子力研究開発機構に指示して、被災地の支援に従事させていたが、中心は福島第一原発周辺の高度汚染地域だった。原発20キロ圏外の相馬市、伊達市、南相馬市の一部をサポートする余裕はなかった。早野教授を含む、有志の医師や研究者が支援したのは、このような地域だった。
▲写真 東京電力福島第一原発(2014年2月14日)出典:raneko flickr
当時、被曝を危惧する人はすでに避難していた。残った人は、故郷で生活すると決めていた。彼らの関心は「どれだけ被曝しているか。どうすれば被曝を避けることができるか」だった。内部被曝と外部被曝の評価が喫緊の課題だった。
内部被曝については、南相馬市立総合病院にホール・ボディ・カウンターを導入した。当時、東大医科学研究所(東大医科研)の大学院生で、震災後すぐに現地に入っていた坪倉正治医師が、メーカーはもちろん、自衛隊にコンタクトしてノウハウを学んだ。ところが、どうしても測定値が有り得ない値を示すことがあった。後日、遮蔽が不十分なため、周辺にまき散らされた放射性物質がノイズとなって正確に測定できていないことがわかった。このとき、坪倉医師が頼ったのが早野教授だった。ツイッターでコンタクトしたところ、協力を快諾してくれた。早野教授の協力で、過去のデータの補正も可能になり、南相馬市立総合病院の内部被曝検査は軌道にのった。多くの市民が検査を受け、自らの被曝が低いことを知って安心した。
▲写真 坪倉正治 医師 出典:相馬中央病院
坪倉医師は、この結果をまとめてアメリカ医師会誌(JAMA)に寄稿し、2012年8月に掲載された。福島の内部被曝がチェルノブイリとは比べものにならないほど低いことを、世界の多くのメディアが報じた。時期を同じくして、相馬市でも内部被曝、外部被曝検査が始まった。私と早野教授は、放射線対策委員会の委員を仰せつかった。
相馬市も被曝検査を実施し、その結果を公表した。一連の検査の主体は市役所で、その目的は市民に正確な情報を伝えること、および海外に現状を伝え、風評被害を抑えることだった。我々はサポートを依頼された。
後者のためには英語での発表が必須だ。一流の学術誌で論文を発表すれば、海外メディアも報じる。ただ、そのためには、倫理的な審査が欠かせない。このノウハウを持つのは大学や研究機関だ。
相馬市・南相馬市も伊達市も市役所と専門家が協力して住民を支援しただけの話だ。どうして、伊達市で問題となったのだろう。
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