親の葬式にも出れなかった!骨髄ドナーのリスクと恵み
Japan In-depth / 2019年2月13日 18時0分
さて、ではドナーの手術によるリスクである。
手術自体は全身麻酔なので、何も分からないまま終わってしまう。この全身麻酔の影響や手術後の経過は人それぞれなので、何とも言えないが、私は1日だけ若干発熱し、頭痛がした以外は、翌日からは全くなんの悪影響もなかった。しかしこれは骨髄バンクのコーディネーターの方によれば比較的珍しいそうで、皆さんなんらかの不定愁訴は多少なりともあるそうである。
しかし大変だったのは退院後からの1週間である。とにかく針をいっぱい刺した腰が鈍痛に見舞われ、階段が登れなくなっていた。歩くことはそれほど大変でもなかったが、階段がゆっくりゆっくりそろそろとしか登れないほど痛かった。あんまり痛いので、腰を鏡で見てみたら、腰一面内出血していてそのグロテスクな様子に我ながら驚いた。面白いことにこの内出血が段々小さくなって下がっていって、見えなくなったころにはすっかり痛みもひいてしまった。その後何の後遺症も感じられない。
このように確かに骨髄バンクのドナーにはリスクが伴う。けれどもやはり私は「やらせてもらってよかった!」という思いしかない。ドナーというのはどう考えても患者さんのためだけではなく、ドナー自身のためにあると思っている。
もしドナーにならなければ、夫の家族に感謝する謙虚な自分がいただろうか?息子の涙をこれほど鮮明に覚えていただろうか?そしてもちろん白血病という病気について考える日が来ただろうか?
でも何よりも一番大きかったのは、一生出会うこともない、どこの誰かも知らない人を助けねば!という思いに駆られ、うだうだと心配する母を説得し、仕事の日程を調整し、苦手な「血を見ること」にも挑戦し、そして義父の葬式に出ないことを決意し、家族に許しを得る・・・そんな困難に挑戦する自分を「案外いい奴じゃん!」と好きになることができた。こっそりと自分で自尊心を溜めこむことができたのである。
「骨髄バンクのドナーになった」と言うことは実にはばかられることである。「いかにも良いことやってます!」とアピールしているようで気恥かしい。理解されず「自業自得だ!」と罵倒されながら「依存症の偏見を解消するぞ!」と闘志を燃やしている方が、よほど私らしい気がする。
けれども2016年に中日新聞さんが私のドナー体験を取り上げて下さり、国会でもその記事を「日比プラン」を推進されている大西健介先生が取り上げて下さった。その時に、「なるほど、私の骨髄バンクのドナーとなった体験談もまた誰かの役に立つのかもしれないな」と思った。
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