現在の救命の尺度とは~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~2
Japan In-depth / 2019年2月21日 11時24分
照井資規(ジャーナリスト)
【まとめ】
・テロや災害は重症傷病者を同時多発させるが、処置や治療は一人ずつ行うのみ。
・有事医療における“戦術”こそ最大多数の最大救命の鍵。
・テロなどによる銃創、爆傷、刃物による致命傷では受傷後1分で死亡率50%。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読みください。】
テロや災害は一度に多数の重症傷病者を同時に発生させることに対して、処置や治療は一人ずつ行う他に方策は無い。平時の医療体制が破綻した際には、同時多発した重症傷病者を選別し、適切に順序をつけることで、いかに1人ずつの治療に持ち込むか、そのtactics=“戦術”、戦い方こそが最大多数の最大救命の鍵となる。そのために重要になるのが、救命の時間的目安と、救命手当が出来る国民を多く増やし、医療従事者が治療に専念できる態勢をとることである。
救命講習でよく目にする「救命曲線」は、1966年にアメリカのドリンカーが作成したドリンカーの救命曲線(Dr. Drinker's Survival Curve)、1981年にフランスのカーラー(Morley Cara)が作成したカーラーの救命曲線(Golden Hour Principle)、2000年にスウェーデンのホルムベルグ(Holmberg)が発表した救命曲線(Effect of bystander cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest patients in Sweden.2000 Sep;47(1):59-70)と移り変わってきた。
ドリンカー曲線は人が呼吸停止してから蘇生できる確率を時間ごとに表したものであったが、データの根拠が明確ではないため現在ではほとんど使われなくなった。
カーラー曲線は、心臓停止、呼吸停止、大量出血の経過時間と死亡率の目安をグラフ化したもので、ゴールデン・アワー・コンセプトについて説明するために作られたが、目安を表現したものであって明確な計算式があるわけでもなく、出血量なども全く考慮されておらず、医学的根拠も定かではない。
図)救命の可能性と時間経過
ホルムベルグ曲線は、心臓停止、呼吸停止の経過時間と救命率の目安をグラフ化したもので、現場に居合わせた人による救命処置が行われた場合と、行われずに現場に到着した救急隊により救命処置が実施された場合の救命効果の差を示したものである。時間の経過により救命のチャンスが低下することと、現場に居合わせた人(=「バイスタンダー」)による手当の実施が救命のチャンスを高めることを、グラフ化することで、誰もが救命のための重要な役割を担っていることを表現している。
この記事に関連するニュース
-
2歳児死亡『虐待親』と呼ばれて...約5年半の身体拘束 一貫して無罪主張、裁判所の判断信じて「逆転無罪」を勝ちとるまでの日々に密着
MBSニュース / 2024年11月28日 17時52分
-
歯の治療を受けるならクスリに注意(2)【抗凝固薬/抗血小板薬】抜歯で出血が止まらなくなる可能性
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月27日 9時26分
-
スーダン:戦傷患者の6人に1人は15歳未満の子ども──首都ハルツームの病院
PR TIMES / 2024年11月21日 19時15分
-
スーダン:戦傷患者の6人に1人は15歳未満の子ども──首都ハルツームの病院
国境なき医師団 / 2024年11月21日 18時20分
-
その「傷」を治すために──パレスチナ・ヨルダン川西岸地区 イスラエル軍による暴力の中で
国境なき医師団 / 2024年11月7日 17時51分
ランキング
-
1時速194キロ暴走は危険運転 遺族「当然の判決」 量刑には疑問も
毎日新聞 / 2024年11月28日 21時0分
-
2大阪維新、岸和田市長を調査へ 吉村代表「トップとして判断」 女性との性的関係巡り
産経ニュース / 2024年11月28日 22時23分
-
3男女の従業員が客を接待…“ミックスバー”と呼ばれる風俗店を無許可で営業か 代表の26歳男を逮捕 容疑認める
東海テレビ / 2024年11月29日 6時54分
-
4セブンの一部店舗、「万引き犯」とされる人物の顔写真を公開 SNSでは賛否両論...本部の見解は?
J-CASTニュース / 2024年11月28日 18時48分
-
5原発の汚染水処理めぐり12億円を詐取か…64歳の会社役員の男を逮捕 架空の発注があったかのように装った疑い
MBSニュース / 2024年11月28日 19時40分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください