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現在の救命の尺度とは~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~2

Japan In-depth / 2019年2月21日 11時24分

 


日本の救命教育の弱さは、救命教育が非外傷性心肺停止の心肺脳蘇生法教育と外傷救護教育が別々に行われていることにある。日本では市民に対する病気、感電、溺水、低体温、生き埋めによる窒息などによる非外傷性心肺停止状態の救命、心肺蘇生法とAEDの使用法の教育が熱心である一方で、アメリカのStop the Bleedキャンペーンのような致命的な大出血への止血帯の使用法教育が来年4月から赤十字により始まりはするものの、止血用資材整備の方はほとんどなされていない。(※参照:「変わる市民の役割~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~1」)


 


アメリカ合衆国の国土強靭化施策として発せられたハートフォードコンセンサス第3勧告書(2015年7月1日発)では、今世紀に入り13年間続いたテロとのグローバル戦争での6,800人以上ものアメリカ軍の戦死者から得た教訓を民間の救急医療にも反映させることを決めた。図のようにベトナム戦争時代よりもかなり進化し、対テロ戦争が終了してから1年後の2012年以降は外傷医学の教科書の多くが書き換わったほどである。止血帯の使用法しか知らなければ、右下の棒グラフの上澄みの部分、救命率にして4%程度が向上する程度である。ボストン市がハートフォードコンセンサスの第一勧告書が出される10年も前から先行的に市民に止血法を普及し、第一勧告書が出される1ヶ月半前の2013年4月15日ボストンマラソン爆弾テロ事件にて効果を発揮したように、止血法教育には手間と時間がかかる。日本における市民による救命の取り組みは、世界の水準に比べれば半分以上が抜け落ちている状態である。


 



出典) イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 ホビージャパン (制作:照井資規)

Tactical Combat Casualty Care GUIDEBOOK Howard R Champion, et al. A Profile of Combat injury. J Trauma, 2003;54:S13-19を一部改変


Brian J Eastruge, Mabry RL, Seguin P, et al.: Death on the battlefield(2001-2011) Implication for the future of combat casualty care.


 J Trauma Acute Care Surg 73(6 Suppl 5) : S431-S437, 2012を一部改変


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