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現在の救命の尺度とは~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~2

Japan In-depth / 2019年2月21日 11時24分

 


救急医療体制ではカーラー曲線を救命率の目安としゴールデン・アワー・コンセプトに拠っていることが問題である。カーラー曲線の目安は脳の不可逆的停止に至るまでの時間から算出されている。脳は大量に酸素を消費することで稼働しているので、酸素供給が5分から6分停止したならば脳の活動継続が完全に止まる。それ以後酸素供給が再開したとしても脳は活動を再開しないため死亡することになる。


 



図)カーラー曲線に銃創・爆傷・刃物による致命傷の曲線を加えて (作成:


照井資規)


 


図にある心臓停止では血液供給の完全停止が脳への酸素供給の即時停止となるので、心臓停止後3分で死亡率が50%となる。呼吸停止では血液供給はされている状態で、血液への酸素供給が止まるため、心臓停止より遅く10分で死亡率が50%となる。


 


一番右の破線にある多量出血は心臓と呼吸が機能していることが前提であり、血液供給量が減る程度なので脳はある程度機能を維持できるとして、30分での死亡率を50%としているが、ここには出血量と急激な多量出血が考慮されていない。


 


カーラー曲線とは、バイスタンダー(※当時の表現)が心肺停止後の時間経過から独自に判断を下し、躊躇せず早期通報と早期CPRの必要性の重要性を理解させるための「目安」であって、このグラフの解説を厳密に行うことに意味は無い。


 


銃創・爆傷・刃物による致命的外傷は、鈍的外傷により体内の胸腔、腹腔、後腹腔に徐々に出血することに比して、体外へと急激に多量に出血する。目安としては、大腿部にライフルによる高速弾貫通銃創を負って大腿動脈と静脈の両方を離断した場合、3分で出血死してしまうことが研究から明らかになった。これを基に、1回の銃撃では複数個所を被弾することがある、爆発物の破片の破壊力は同じ質量の銃弾の16倍に達する、などを鑑みて受傷後1分間で50%の死亡率という目安、一番左の実線が用いられるようになった。


 


度重なるテロ事件や戦争の経験から、世界は図のようにカーラー曲線の心臓停止曲線よりも更に緊急性の高い目安として、銃創・爆傷・刃物による致命的外傷による曲線(一番左の曲線)を描き加えたような時間的目安を持つようになった。このため、市民による救命止血法の重要性が認識され始め、救急医療体制についても従来の「ゴールデンアワー」という「一律一時間以内」よりも症例の緊急度に応じた時間尺度を持つべきとして「ゴールデン・ピリオド」と改めるようになった。


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