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日本の救命教育は世界水準の半分以下~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~3

Japan In-depth / 2019年2月22日 18時0分

日本の救命教育は世界水準の半分以下~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~3


照井資規(ジャーナリスト)


【まとめ】


・日本では非外傷性心肺停止の救命手当教育が主に行われている。


・世界は致命的大出血の止血までを含めた総合的救命手当教育に進化している。


・市民への救命手当教育の普及は間接的な防衛力発揮にもなる。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44285でお読みください。】


 


この記事はシリーズでお伝えしている「世界が挑戦 市民への統合型救命教育」の「1. 変わる市民の役割」「2. 日本が知らない世界の救命の尺度」の続編である。


現在の日本で「市民による救命法」と言えばBLS:Basic Life Support(一次救命処置)であり病気や感電、溺水、低体温などによる非外傷性心肺停止状態を対象とした心肺脳蘇生法が主だ。BLSと併せてAED:Automated External Defibrillator「自動式体外除細動装置」の整備と使用法の普及が進められている。アメリカ心臓協会(AHA)のTVコマーシャルでは、一般市民向けに心肺脳蘇生法を簡潔明瞭化して「まず救急へ通報、次に胸の真ん中を強く早く押す」だけを強調しているが、日本でもCall Push「通報して胸の真ん中を強く早く押す」と言われるようになった。



▲図 心臓マッサージに伴うリスク 制作:照井資規


非外傷性心肺停止状態の救命手当を実行する際に、ためらう要因として最も多いものが「やり方がわからない」その次は「リスク」である。そこで、救命手当教育を簡潔明瞭化しリスクについても研究がなされるようになった。「ガイドライン」で知られるILCOR(※1)のCoSTR(※2)によれば、心臓マッサージに伴うリスクは肋骨が折れる程度で、致命的なことは起きないことが判明している。図は、心臓マッサージが必要なかった人に心臓マッサージをしてしまったことによるリスクを研究したものであるが、発生率は0~11%で致命的なものは1例も無い。肋骨が折れてしまうのは、肋骨を押すために生じる。解剖生理の知識に乏しいため、心臓のある位置を左胸と思っており、その付近の肋骨を押し込んでしまうことで生じる。心臓マッサージは胸骨を押す。胸骨と肋骨は肋軟骨で接続されるため、胸骨を押せば肋骨が折れるリスクはほとんどない。そこで、「心臓マッサージ」は目的、「胸骨圧迫」は押す場所と教えるようになった。


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