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3種の救命手当教育を1つに~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~4

Japan In-depth / 2019年2月23日 11時51分

日本に必要な救命教育は図「心臓を止めるな!循環・呼吸・環境」にあるようにそれぞれの救命法に縦串を通すような総合的な内容である。



▲図 統合体験型救命手当教育 制作:照井資規


 


■ 「心臓を止めるな!」


呼吸機能も心臓機能も止まってしまう前に機能維持に努めた方が遥かに救命率は高い。日本語で「心肺蘇生法」と翻訳されるCPR(Cardio Pulmonary Resuscitation)も、 「心肺機能」をRe「再び」sustain「持続させる」である。


心臓はポンプ機能を担っているが、図「心臓とポンプの違い」のように「生き物」であることを強く意識しなければならない。心臓のポンプ機能が停止し、時間が経つにつれ、心臓の細胞から酸素をエネルギーが失われてしまったならば、心臓が再び動き出すことは極めて難しい。



▲図 心臓とポンプの違い 制作:照井資規


しかし、実際は心臓のポンプ機能が停止した直後は、心臓が完全に停止しているのではなく、心室細動(VF)/無脈性心室頻拍(pulseless VT)、すなわち痙攣している状態にあることが多い。図「心臓を止めるな!循環・呼吸・環境」にあるように、心臓が細動状態で血液を送り出せない状態であっても、動いてはいるのであるから再び正常な動きを取り戻せる確率は高い。また、この状態で最も効果的な治療は「電気ショックにより心臓の細動を取り除く」電気的除細動のみであるから、早期のAEDの適用が重要である。救急車到着まで8分以上かかるので市民によるAED使用が重視されるのはこのためである。東京マラソンでは2018年現在までに11名が心肺停止状態になった。そのうち10名がVF/pulseless VT、1名が心静止であったが全員が社会復帰しており、迅速な対応により救命率100%を達成していることは世界的に称賛されている。



▲写真 東京マラソン(2012年2月26日)出典:kakidai


心臓が心静止、無脈性電気活動の場合は細動状態ではないのでAEDによる除細動の適用外である。この場合は、心臓マッサージによる人の手で循環を維持する他に方法が無い。VF/pulseless VTの状態でAED到着まで時間を要する場合でも、心臓マッサージにより心臓に酸素とエネルギーを供給し続けることが重要である。


以前は、非外傷性心肺停止は「心臓が止まったらすること」、大出血は「心臓が止まる前に止血」と分けて教育されてきたが、今では「心臓を止めるな!」に統一されるようになった。心臓が細動ながらも動いているうちに、救命手当を施すことの重要性や市民自身が救命の役割を担っていることを自覚させるため、AEDの普及と早期適用を促すためである。市民救助者の表現もBy Stander(「その場に居合わせた人」)からImmediate Responder(「最も早く救護の手を差し伸べる人」)に改められた。


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