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3種の救命手当教育を1つに~世界が挑戦 市民への統合型救命教育~4

Japan In-depth / 2019年2月23日 11時51分

 


■ 「簡潔明瞭」に教えるが簡単ではない


心肺蘇生教育をする中でよく目にする勘違いは「人工呼吸は必要が無い」である。心臓が生き物であることを理解していれば、このような勘違いは起きない。循環のみを維持しても血液の中に酸素がなければ、脳自体には酸素を蓄える能力がないので、呼吸停止後4~6分で低酸素による不可逆的な状態に陥る。人工呼吸により酸素を供給し、心臓マッサージにより脳への血液循環を維持することがLife Supportの目的である。


アメリカ心臓協会(AHA)のTVコマーシャルでは、一般市民向けに簡略化して「まず救急へ通報、次に胸の真ん中を強く早く押す」だけを強調しているが、「人工呼吸の訓練を受けており、それを行う意思がある救助者は、全ての成人心停止傷病者に対して胸骨圧迫と人工呼吸を実施する」ことも提案している。人工呼吸の方法がわからない、ためらわれる場合は一秒でも早く心臓マッサージを開始すべきであるということであって目的は何かを常に自覚していなければならない。そのため最近では「心肺脳蘇生」と脳への酸素供給を強調するようになった。



▲図 心臓を止めるな!循環・呼吸・環境 制作:照井資規


救命手当が簡単であるかのように教育することが目立つが、これは大変危険である。誰でも解りやすいように簡潔明瞭に教えることは重要である。しかし、簡単だと思わせてはならない。救助者は重い責任を負うのであって、継続して学び続けなければならないことである。救命教育の研究から半年で60%程度しか憶えていないことが明らかになり、半年に1度は体験的に復習することが望ましいとされる。


100年語り継がれる教訓がある。


“The fate of the wounded rests in the hands of the one who applies the first dressing.”


=「負傷者の運命は最初に包帯を巻く者の手に委ねられる」(Nicholas Senn,MD 南北戦争)。


このことが救命手当教育のあるべき姿勢をよく表している。


ペットボトルを潰す力が心臓マッサージに必要な力に近似するということでペットボトルを用いて心臓マッサージを教えるところがあるが、力加減には目安にして5kg~50kgと10倍もの差がある。筋肉の塊である心臓が痙攣していたら、血液を送り出すまでに相当な力で圧迫しなければならないことは少し考えれば解ることである。痙攣していない心静止状態では少ない力で圧迫できる。体格にも差が出るためペットボトルを押すことでは力加減を学ぶことはできない。


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