新防衛大綱・中期防を読む(上)
Japan In-depth / 2019年4月3日 23時0分
いずも級改は先述のように常に固定翼艦載機を搭載するわけではない。F-35Bは地上基地をベースにして運用され、「いずも級改でも」運用されることになる。つまり英国と同じような運用になるだろう。これによって戦闘機の運用に適する滑走路の少ない南西諸島や硫黄島や小笠原島付近などでの柔軟な運用が可能となる。
F-35Bの整備のパッケージは前線にも展開が可能だ。また当然ながら米海兵隊のF-35Bの燃料・弾薬の補給なども可能だ。このような柔軟な運用が可能となり、抑止力が向上するので、国防のために多目的軽空母は必要だと主張すべきだ。
ただ、いずも級を改良しても、そのまま空母として運用ができるわけではない。海自には空母の運用のノウハウがないからだ。まずは一隻改造してみて、試験的に運用を重ねてノウハウを蓄積する必要があろう。その後にはいずも級を発展させた本格的な「空母」が登場するかもしれない。
今度の大綱では新型揚陸艦の導入が見送られたが、次の大綱ではむしろ揚陸艦を兼ねた多目的空母が導入されるかもしれない。だが大綱によれば統合部隊として海上輸送部隊が1個輸送群編成される。次期中期防では入っていないので次の中期防で実行されるようだ。導入が検討されているのは中型級船舶(LSV)及び小型級船舶(LCU)で次期中期防中に骨子が固まるだろう。筆者も度々指摘してきたが、これまで海自はこれら中小の揚陸艦艇が殆どなく、島嶼防衛の大きなネックとなっていた。統合部隊は恐らく海陸自の合同部隊なるだろう。
「空母」が導入されるのは島嶼防衛や近海防衛のみのためではない。政府は南シナ海においてオーストラリアや米国、英国、東南アジア諸国らと艦隊を派遣することによって中国海軍に圧迫を加えて、東シナ海での中国圧迫を減らす目的もあり、実はこちらの方を政府が主たる目的として認識しているように見える。
▲写真 早期警戒機E-767 出典:航空自衛隊ホームページ
「空母」として運用するのに艦載型の早期警戒機は必須だが現在は存在しない。防衛省は早期警戒管制機機E-767や早期警戒機、E-2C、E-Dなどを空母艦隊の早期警戒に当てるとしているが、いかに長時間飛行が可能なE-767でも常に艦隊上空をカバーするのは難しい。同機は4機しか存在しないために、本来の空自戦闘機隊の誘導などに支障がでるだろう。
▲写真 MCH-101 出典:海上自衛隊ホームページ
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