新防衛大綱・中期防を読む(上)
Japan In-depth / 2019年4月3日 23時0分
筆者は任務ごとに駆逐艦、フリゲイト、コルベットとクラス分けをして、建造・運用コスト、乗員数を抑えるべきだと提言してきたが、それが次期大綱ではそれが実現した形となった。ただ海自はそれぞれにどのような任務を付加させるのかは明確に説明していない。
現状FFMを見る限り「人減らし」だけを目的にしているように見える。諸外国では例えば英海軍などはフリゲイトに上陸用部隊を収容するような機能を付加させているが、島嶼防衛に力点をおくならばそのような機能も付加させても良かったのではないだろうか。
▲写真 尖閣諸島の魚釣島 出典:© 国土画像情報(カラー空中写真)国土交通省(Wikimedia Commons)
FFMではRWS(リモート・ウェポン・ステーション)が海自の護衛艦として初めて導入されたが、コストダウンのためにレーザー測距儀と自動追尾装置が省略されている。このため接近する自爆テロの高速ボートには対応できない。本来戦闘艦用のRWSは近接する高速艇などのへの防御のために導入されるべきものだが、海自では単に艦内で見張りができ、なおかつ見張りと機銃手を1名で兼ねられるので省力化ができるということで採用したようで、いかにもずれている。しかも他に近接用の火器が搭載されていないので、RWSの死角はがら空きとなる。FFMの艦の開発コンセプト自体が疑われる。
これも筆者が長年主張していたことだが、FFMについては複数クルー制度を導入し交替勤務の導入によって、艦艇要員1名あたりの連続洋上勤務日数の削減を行うことが盛り込まれている。既に一昨年音響艦にクルー制を導入したがこの下準備だったのだろう。
これは取り上げているメディアは少ないが海自の運用の大きな変化になるだろう。そうしないと海自の艦艇の乗組員が確保できないからだ。クルー制は今後護衛艦、潜水艦、他の艦艇にも導入されるに違いない。艦艇の数を増やすよりも、クルー制の導入で複数のクルーで、より少ない艦艇の稼働率を上げるほうがコスト的にも有利だろう。
▲写真 隊員確保のためにクルー制導入が求められる(写真はイメージ)出典:海上自衛隊ホームページ
これは空自の戦闘機などでも同じで、一機あたりの搭乗員を増やせば一回に出撃できる戦闘機の数は増える。現在、一機あたりの搭乗員は1.6~1.8名程度と言われているが、人事移動や機種転換、傷病などで実際の人数は少なくなる。
仮に実際の人数が一名であれば、通常勤務であれば飛ばせる機体は1/3でしかない。後は休暇だったり、勤務時間外だったりする。非常呼集を掛けても全機分の搭乗員が確保できることはないだろう。
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