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改良型も不首尾なASM-3

Japan In-depth / 2019年6月5日 11時44分

改良型も不首尾なASM-3


文谷数重(軍事専門誌ライター)


【まとめ】


・ 不採用におわった国産超音速ミサイルASM-3の改良型が模索されている。


・ 超音速にこだわる限り高コスト、低命中率、低汎用性の問題は解決できない。


・ 加えて極超低空を飛行できず全反射、干渉縞、複雑マルチパスも利用できない。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=46144でお読みください。】


 


国産対艦ミサイルの開発は失敗に終わった。超音速ミサイルASM-3の開発は完了した。だが不採用となった。理由は「仮想敵である中国艦隊に通用しないため」とされている。


だが、防衛省は射程延伸型の開発を決めた。*1 「艦隊防空圏外から攻撃すれば通用する」と判断した結果といわれている。


このASM-3改良型は成功作となるだろうか?


ならない。ASM-3改良型も不満足に終わる。


その理由は以前に「国産ミサイルはいらない」で述べたとおり。超音速ミサイルは高コストと命中率不良、低汎用性の不利を伴う。


その上で付け加えれば「極超低空を飛行できない」不利もある。ASM-3や改良型はマッハ3級であり海面ギリギリを飛行できない。高度は巡航飛行でおそらく10mは切らない。そのため極超低空で生じる諸現象、全反射、干渉縞(かんしょうじま)、重度マルチパスによる迎撃困難の利益を享受できない。


 


■ 全反射:逃げ水を利用できない国産ミサイル


ASM-3改良型は極超低空飛行による利益を得られない。


第1の不利は全反射による鏡面効果の利用困難である。


これは極超低空で多発する現象だ。海面上数mまで空気層では光速変化層が生じやすい。その際に視差角が一定角度以下となると光速変化面は全反射、つまり鏡面となる。その下は光も電波も届かない。


水面の全反射と同じ理屈だ。水中から空中を見る。あるいは金魚水槽の側面ガラスを見ると鏡面となる場合がある。視差角50度以下で全反射が起きるためだ。



▲写真 逃げ水 全反射/逃げ水の発生。道路上に光速変化層が生じた結果、一定視角度未満で全反射を起こしている。当然ながらその下面は見えない。 出典:WIKIMEDIAより入手。撮影:Michael(CC BY 2.0)


大気でもそれは起きる。海面上に変温大気層あるいは水蒸気量変化層が発生する。その変化層と観察者との視角度差が0.1~0.3度を切ると鏡面化する。逃げ水や蜃気楼はそのような現象である。


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