自滅への道歩む陸自ヘリ部隊
Japan In-depth / 2019年10月22日 21時14分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・ほぼ全滅に近い陸自観測偵察ヘリ。戦闘ヘリ部隊は活動困難。
・陸自特科は目が見えず、耳が聞こえないボクサーのよう。
・2020年代前半には陸自ヘリ部隊は自らの失策で壊滅する。
陸自の観測・偵察ヘリと攻撃ヘリは運用も調達も暗礁に乗り上げており、これらの部隊を維持していても税金、人員その他のリソースの無駄使いとなっている。
偵察ヘリは本来川崎重工がライセンスした単発のOH-6が、同じく川崎重工が開発したOH-1に置き換えられる予定で、当初は250機ほどが調達される予定だった。だが、1機6億円程度のOH-6と比べて、調達コストが24億円ほどに高騰したOH-1は調達コストの上昇と、コスト上昇による調達機数の減少によって、外国のベンダーが手を引き、結果34機の調達で終了した。
▲写真 観測ヘリコプター OH=6D 出典:Flickr; JGSDF
このためOH-1で更新されるはずのOH-6は老朽化と用途廃止が進み、来年度には全機が退役する予定だ。陸自の観測偵察ヘリはほぼ全滅に近い状態といっていいだろう。そのOH-1は、以前はローターブレードの不具合で一年以上全機が飛行できず、現在まで約3年半エンジンの不具合でこれまた全機飛行停止状態だった。
これまで2機がエンジン改良の試験飛行を行っており、その改修の目処が付き、この3月から1機が飛行可能となった。だがエンジンの改良は1基6千万円、1機に2基のエンジンが搭載されているため1機改修するためには1億2千万円が掛かる。34機ならば40億円以上かかる。防衛装備庁は予算のこともあり、全機改修が完了するのには10年は掛かるとしている。
しかもOH-1の偵察能力は時代遅れだ。リアルタイムの通信は音声通話だけで、データリンクで情報や画像をリアルタイムで送れない。撮影画像は基地に帰投して、VHSに変換しなければならない。これでは現代の戦闘はおろか、災害派遣でも使い物にならない。
また、なまじ国産の専用の機体、専用のエンジンを搭載しているので、パーツやコンポーネントの調達コストも高い。このような機体に約410億円という巨額の費用と10年の歳月をかけて回収し、維持すべきだろうか。ネットワーク機能を強化するならばそれに倍するコストがかかるだろう。しかもその10年の間は数が揃わないので部隊としての稼働率は大幅に下がったままとなる。
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