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水害対策、垂直避難の検討を

Japan In-depth / 2019年10月23日 14時21分

私は、このような主張に疑問を感じる。本当に「無駄でも早めの避難を」でいいのだろうか。医師で相馬市の市長を務める立谷秀清氏は、「水害対策は難しい。市民を避難させるためには、受け入れ体制を整備しなければならず、準備は不十分だ」という。



▲写真;立谷秀清・相馬市長。医師でもある。出典:全国市長会ホームページ


立谷氏と話していて、筆者が興味を抱いたのは、「わが国の災害対策は震災を念頭に検討されてきた」という言葉だ。


東京都の場合、都市整備局が「防災 ~都市の確実な安全と安心の確保」というホームページを開設している。その中に「避難場所・避難道路の指定」という項目があるが、クリックすると出てくるのは「震災時火災における避難場所及び避難道路等の指定」だ。全ての記載が震災対策だ。


医療ガバナンス研究所が位置する港区の場合、「広域避難場所及び地区内残留地区」に指定されているのは、明治神宮外苑地区、青山墓地一帯、有栖川宮記念公園一帯、芝公園・慶應大学一帯、自然教育園・聖心女子学院一帯、高輪三丁目・四丁目・御殿山地区だ。いずれも広大な屋外空間で、震災後の火災対策や余震対策には有効だろうが、台風の中で避難できる場所ではない。


水害の際の避難所は、公立の小中学校の体育館や教室となるが、東京の場合、どこの学校に避難するかは、どの町内会に所属するかで決まる。避難所の中には浸水が予想されているところもある。かくの如く、地震対策と比較して、水害対策は不十分だ。


これは高度成長期以降のわが国の歴史に負うところが多い。平成以降、わが国は阪神大震災、東日本大震災など多くの震災を経験したが、最近まで水害が話題になることは少なかった。両者を区別して議論してこなかった。


今回も弊害がでている。日本経済新聞の10月17日の記事によると、宮城県丸森町の場合、当初、町役場の隣にある「丸森まちづくりセンター」を避難場所に指定したが、台風が接近した12日夜には、屋上の排水が追いつかず溜まった水があふれ出した。周辺で浸水も始まったため、午後9時ころに隣の町役場(4階立て)に避難者約70人をマイクロバスで移送したという。この地域はハザードマップで浸水の危険性を示すピンク色で塗られていた。現に外部は10センチほど浸水していた。急ごしらえで整備された町役場の避難所は数十人が同じ部屋に入れられた。


福島県郡山市でも避難所が変更となった。12日午後1時から避難した高倉小学校は高台にあり、収容スペースも広かったが、敷地の一部が土砂災害の警戒区域だったためだ。豪雨は土砂災害のリスクを高めることが、十分に認識されていなかった。


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