水害対策、垂直避難の検討を
Japan In-depth / 2019年10月23日 14時21分
亡くなった方の年齢は7~100才までにわたるが、正確な年齢が分かっている29人中、16人が70才以上、8人が60歳代と被害者は高齢者に集中している。高齢者こそ、災害弱者なのだ。
さらに、70歳代以上の16人に限定して分析すれば、亡くなった場所は屋内11人、屋外5人だ。後者の5人の中には、ヘリで救出中に墜落した方や、職場に駆け付けた市職員、病院職員、新聞店勤務者などがいる。墜落した方を除き、リスクを承知で豪雨の中を行動した人たちだ。「殉職」であり、避難対策とは別個議論すべきだ。本稿では取り扱わない。
一方、屋内で亡くなった11人については「避難の失敗」と言っていい。彼らが死に至る状況を詳細に分析すべきだ。彼らの住居は、4人が平屋住まい、7人が二階立て以上の家やアパートだった。私が驚いたのは後者だ。二階立ての家に住んでいれば、二階に逃げることで、命を守ることが出来たはずだ。
実際に、福島県では、このように対応したケースが多い。南相馬市で在宅医療に従事する根本剛医師は、「川沿いに住んでいる患者さんがいましたが、消防団がやってきて、二階に「垂直避難」して無事でした」と言う。
では、なぜ、二階に逃げなかった人がいるのだろう。注目すべきは、7人の死者のうち、5人が独居だったことだ。彼らの住居はアパート3人、市営住宅1人、一戸建て1人だった。4人は集合住宅に住んでいるため、周囲がサポートすれば、容易に二階以上に避難出来たはずだ。彼らが溺死した背景には社会的な孤立があった可能性が高い。社会的な紐帯が水害死を防ぐ重要な要素かもしれない。このことは、東日本大震災の経験とも合致する。
家族とともに住んでいたのに、溺死した二人の経過も示唆に富む。家族6人と生活していた79才の女性の場合、家族が避難を呼びかけるも応じなかった。悪天候の中を自宅から遠い避難場所まで移動すること、避難生活が大変なことを考慮したのだろうか。もし、家族と二階に避難していたら、助かった可能性があるのに残念だ。
では、平屋住まいの方はどうしたのだろう。亡くなった4人は、夫と二人暮らしだったが、足が悪かったため避難出来なかった91才の女性、妻が浸水に気づき、周囲に助けを求めたが、足が悪く動けなかった86才男性、一人暮らしで愛犬を抱えたまま亡くなっていた86才女性、一人暮らしで、周囲から避難を誘われたが自宅に留まった100才の女性だ。多くの高齢者が独力で避難できないことがわかる。
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