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福島県いわき市の乳がん診療

Japan In-depth / 2019年10月25日 13時35分


▲写真 松ヶ岡公園から見たいわき市中心部 出典:フォト蔵Daa


なぜこのような事態に陥ったのでしょうか。その理由を明らかにする上で、同じ福島県浜通り地方に存在する相双医療圏との比較は何らかのヒントを与えてくれるかもしれません。前述の通り、相双医療圏においては、2011年から2016年にかけて、医師数が増加していました(120.4人→145.3人)。同地域に福島第一原発が存在することを考えると、意外に思われる方もいると思います。筆者は、相双医療圏において医師数が維持された理由として、震災後に、仙台市からのアクセスが維持されたことが大きいと考えています。一方で、震災後、いわき市においては福島市や郡山市を経由しなくては仙台市に移動することが不可能になったのです。


いわき市で働き出して驚いたのは、この地域に長く住んでいた住民の中に、「いわきで大きな病気(がんや心血管疾患)になったら諦めるしかない。」といったことをおっしゃる方がいたことです。福島で働いて8年になりますが、医療者の数が少ないとされている相双地区で働いていた時でさえ同様の言葉は聞いたことがありませんでした。もちろん、現在のいわき市の医療水準を考えた時にこのような言葉が必ずしも真実とは考えません。ただ、歴史的に医師数が少なかったことや、周囲の都市部への移動も容易ではなかったこともあり、長い時間の中でこのような意識が住民の中に醸成されてきたのかもしれません。


では、いわき市において乳がんになった方々はどのような経験をしてこられたのでしょうか。この点について考える時に個人的に思い出されるのが、私が赴任する以前に、「いわき市内で乳がんの診断を受けた後に市外で治療を受けている方々が大勢いる」という話を耳にしたことです。いわき市の乳腺診療について検討するために、今回、この風評についてまず検証してみたいと思います。まず、いわき市において年間にどの程度の方々が乳がんになるかを推測します。国立がん研究センターによると、2014年に乳がんと診断された女性は日本全体で78,529人いたと報告されています。これは現在手に入る中で最新のデータです。年齢構成の違いなどを考慮せずに単純化して、同じ発症率でもっていわき市の女性が乳がんを発症したとすると、2017年(人口34.6万人)には220人ほどが乳がんと診断された計算になります。手術の対象となることが少ないステージ4は約4%と報告されていますので、1 ステージ3以下で発見される乳がん患者はおよそ210人ほどになりそうです。


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