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福島県いわき市の乳がん診療

Japan In-depth / 2019年10月25日 13時35分


▲写真 いわき市医療センター 出典:いわき市医療センターFACEBOOK


次に、現在、いわき市において乳がんの手術や抗がん剤治療などを実施している有床医療機関について考えます。筆者が理解する限り、現在このような施設は主に4つ存在します。(旧いわき市立総合磐城共立病院)(許可病床数 700床)、福島労災病院(許可病床数406床)、ときわ会常磐病院(許可病床数240床)、呉羽総合病院(許可病床数199床)です。2017年ではありますが、いわき市医療センター、福島労災病院の年間の乳がん治療数は、それぞれのホームページにおいて、62例(手術症例のみ)、50例(手術症例以外も含む)と報告されていました。なお、同年のときわ会常磐病院の乳がん手術症例数は26例でした。呉羽総合病院の手術症例数は公開されていませんでしたが、ときわ会常磐病院と病床規模が同程度であり、およそ同数の乳がん患者の治療が実施されていたと仮定すると、ときわ会常磐病院と呉羽総合病院において、50〜60例の乳がん手術が実施されていた推計になります。以上を合わせると、2017年に4つの医療機関で手術を受けた乳がん患者数は160〜170例ほどになりそうです。かなり粗い計算にはなりますが、いわき市の乳がんの年間の発症数によって40〜50例ほど(約20%)が市外で治療を受けているという計算になりました。どの地域においても地域外で治療を受けることを希望される方は一定数いらっしゃいますので、この割合が大きいか少ないかを議論することは簡単ではありません。ただ、私が以前相双地区において最大の自治体である南相馬市の医療機関のデータを分析した際には、地域外の医療機関で治療を受けた乳がん患者の割合はおよそ10%ほどでした。2 そのため、いわき市は南相馬市よりは高い水準であったとは言えるのかもしれません。


私には個別の患者さんがどのような経緯や理由をもって、市外で治療を受けるようになったかはわかりません。ある人は東京のがん専門病院や大学病院、その他の大病院で治療を受けることに価値を見出したのかもしれませんし、別の人は遠くに住む子どもが自分たちの近くで治療を受けることを勧めたのかもしれません。また、医師も患者も人間ですから、単純に主治医との相性の問題だったということもあります。少なくとも、私がいわき市に赴任してからも市外の医療機関での治療を希望される方々はいらっしゃいますので、乳がんの治療に関しての物理的なアクセスのみが理由というわけではないと考えています。


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