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福島県いわき市の乳がん診療

Japan In-depth / 2019年10月25日 13時35分


▲写真 呉羽総合病院 出典:Wikimedia Commons; Altomarina


ただ、乳がんは、当然例外はありますが、心血管疾患や他の消化器がんと比較すると、比較的進行が緩やかな疾患であることが知られています。そのため、日から週の単位で治療が遅れたからと言って治療成績が悪化するということは一般的ではありません。実際、医学誌ランセットに1999年に発表された研究によると、症状の自覚から3ヶ月の治療の遅れが予後悪化の1つの目安として用いられています。ですから、いわき市外の医療機関を受診し治療を受けたからと言って、スムーズに治療が実施されれば、その後の生存に大きな影響を及ぼすことはあまりないだろうと思われます。ですから、筆者は、市外で治療を受けるという選択は決して悪いことではないと考えます。一般的に、紹介先としては、福島県内であれば郡山市にある星総合病院や福島市にある福島県立医科大学病院、福島県外であれば都内のがん専門病院を選択される方々が多くいらっしゃる印象です。


もちろん、乳がん診療は現在かなりの部分で標準化されており、いわき市で提供されている診療が都市部と比較して劣っているとは思いません。とはいえ、いわき市には乳がんの専門医の資格を持った常勤医は現在1人(いわき市医療センター)のみであり、ほぼ同じ人口規模の郡山市や福島市と比較すると、とても少ない水準です。このようないわき市の現状を考えた際、乳腺外科医として勤務することは、乳がん患者さんの治療選択肢増加につながる重要な取り組みと考えています。


名誉院長の江尻友三医師を引き継ぎながら診療体制をさらに充実させ、現在、当院においては、放射線治療や乳房再建を除いては、原則として標準的な検査や治療を提供する体制が整えられています。幸い、少しずつではありますが当院の乳がんの治療数は増加しています。2017年の乳がん手術数は26件でしたが、2018年には56件、2019年は1月から9月までの手術数は50件であり、2018年よりもう幾ばくか増加しそうです。もちろん手術数や患者さんの数が単純に増えることが最終目的ではありません。しかし、患者さんの治療数が増えることで、経験が蓄積され、診療の質の向上や標準化に繋がることも事実です。今後も、地域に暮らす患者さんに乳がん治療の選択肢を増やすことを目標に診療を続けていきたいと思っています。このような理念に賛同して私と一緒に、ときわ会常磐病院の乳腺診療に従事していただける方がいれば、ぜひお声がけくださいますと幸いです。


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