対中強硬姿勢でトランプ再選【2020年を占う・米中関係】
Japan In-depth / 2019年12月31日 21時43分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
【まとめ】
・米中テック戦争や知的財産権の争いが激化。
・中国が軍事拡張や国内政治弾圧をエスカレートさせる。
・トランプ氏、貿易以外に対中強硬姿勢を強め、再選へ。
2020年は、
①米中貿易戦争の一時的な「休戦」で神経質になっていた市場が落ち着く一方で、米中テック戦争や知的財産権の争いが激化し、
②中国が軍事拡張や国内の政治的弾圧をエスカレートさせ、北朝鮮の核兵器や大陸間弾道弾(ICBM)ミサイル開発を陰で援助することに対する米国の不満が高まり、
③「永遠に終わらない弾劾の中間地獄」の中で大統領選挙を戦うことを強いられるトランプ大統領が貿易以外の面で対中強硬姿勢を強め、それが多くの米国民の支持を得てトランプ氏が再選される、と予想する。
■ 米中貿易戦争の一時的な「休戦」
トランプ大統領が2019年にエスカレートさせた中国からの輸入品に対する関税引き上げは、中国の習近平国家主席による報復関税を招き、米中両国の経済が打撃を受けた。
たとえば、米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年12月23日に発表した報告書によれば、2018年および 2019年にトランプ政権が発動した報復関税により、米製造業の雇用が1.4%押し下げられる一方、製造コストが4.1%上昇するなど、じわじわと悪影響が増大している。農家も大口顧客を失い、苦しんでいる。
一方の中国でも、国内総生産(GDP)の実質成長率が鈍化し、2020年には6%台から5%台へとさらに落ち込むことが確実視されるなか、企業、地方政府、家計がそれぞれに過剰債務という「時限爆弾」を抱えることが懸念視されている。
このような状況下で、国内からの突き上げが無視できないトランプ・習両氏が一時休戦に合意するのは、自然の成り行きであったといえよう。だが、多くの識者が指摘するように、中国の構造改革や知的財産権の問題、その底流にある中国の覇権拡張などの構造的な問題は何も解決されておらず、米中テック戦争や知的財産権の争いが2020年にさらに激化しよう。
そうしたなか、米国にも痛みが大きい報復関税はこれ以上エスカレートさせずに、中国により象徴的・効果的に痛みを与えられる代替案が実行に移されるだろう。
具体的には、米国における特定の中国企業の上場廃止やそれら企業への投資制限を通して、マネーの流れを止める「資本規制」が見られるようになる。米市場に上場する中国企業の時価総額は130兆円を超えており、狙い撃ちで効果的に中国に打撃を与えることができる。
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