依存症対策見直し必至【2020年を占う・社会】
Japan In-depth / 2020年1月3日 11時0分
薬物依存症は「病気」であり、治療が必要なこと。欧米諸国では「ハームリダクション」と呼ばれる薬物事犯に対する非犯罪化政策が取り入れられていることなどが紹介されるようになり、ワイドショーなどは相変わらず批判一辺倒のところが多いが、情報番組などでは「批判だけでは解決にならない。」「刑罰以上の私的制裁を加えるべきではない。」と言った発言も有名タレントから発せられるようになった。
また2019年度は、こういった芸能人による薬物事犯だけでなく、4月には経済産業省、5月には文部科学省のそれぞれキャリア官僚が覚せい剤取締法違反の罪で逮捕されるという事件が起こった。覚せい剤や注射器が職場からも発見されたことから、霞が関に衝撃が走ったが、この事件を契機に、かつては反社会的勢力の人々の間で蔓延しているイメージのあった違法薬物の使用が、このようないわゆるエリートたちにも起こりうることであり、誰にでも簡単に手に入ることも知られることとなった。
実際に、私たち支援者の元に訪れる人たちも、普通の社会人である。家庭を持ち、会社勤めをし、例えば、公認会計士や税理士といった「士業」に就かれている方もいる。こういった方々が、薬物を止め、回復して行くためには薬物事犯を必要以上に特別視、白眼視していったのでは逆効果である。
「バレたら全てを失う。」という脅しでは、問題を隠蔽させ、重症化してしまう。だからこそ薬物使用で法律に定められた必要以上の私的制裁をエスカレートさせてはならないのである。2020年度以降は「全てを失う前に治療に繋がる。」この流れを作っていくことが必要とされる時代になるであろう。
バッシングにより再起する道をふさぎ、職業を奪い、孤独に追いやっても誰のためにもならない。それでは生活保護などの社会負担費は増加する一方であり、絶望から自暴自棄になり再犯する可能性も高まってしまう。再犯すれば裁判から刑務所のコストも全て税金から拠出しなくてはならないのである。現在の日本は格差社会に苦しみ、社会負担費の増加にあえいでおり、これ以上、一部無知なタレントが人気取りのためにやっている、声高な感情論、道徳論にまんまとはめられ、自分たちの税金にツケが跳ね返るようなことを増長させてはならない。
▲画像 薬物乱用「ダメ。ゼッタイ」ポスター 出典:厚生労働省
私たちは、冷静かつ客観的に物事を判断し、80年代に、民放連が流行らせた人権侵害コピー「覚せい剤やめますか、人間やめますか」から脱却し、社会にとって一番メリットのある方法、コストパフォーマンスの高い支援を行うべきである。今後は「ダメ、絶対」ではなく「回復から再起へ」といった道を示していくことが重要である。
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