19式装輪自走155mmりゅう弾砲は戦える装備か
Japan In-depth / 2020年1月12日 12時21分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・19式装輪自走155mmりゅう弾砲は兵器として欠陥がある。
・キャビンに装甲化がされていないため、化学兵器等に耐えられない。
・軽量榴弾砲の方が特科の能力向上とコストパフォーマンスは高くなる。
陸上自衛隊は平成30年度予算で牽引式の155mm 榴弾砲の後継となる新型の「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」7輛を51億円、初度費17億円で要求、令和2年度の概算要求も引き続き7輛、47億円を要求している。だが兵器として欠陥がある。
筆者はこの種のトラックの車体を流用した自走榴弾砲を「簡易型榴弾砲」と呼んでいる。それは単に装輪榴弾砲というと南アのG6のような全周装甲化され、旋回可能な砲塔を持ったものまで含まれるからだ。
「簡易型榴弾砲」はいわば牽引式榴弾砲と通常の装甲化された自走榴弾砲の中間的な存在である。牽引式榴弾砲に比べて自力による展開能力が高く、進出・撤退も迅速に行える。一般にキャビンは一般的に装甲化されており、このため生存性も高い。装軌式ないし装輪の完全に装甲化された自走榴弾砲に比べて調達・運用価格が安く、また戦略移動性が優れていることが挙げられるだろう。
この種の自走砲の嚆矢は90年代に登場したフランス陸軍が採用したカエサル(CAmion Équipé d'un Système d'ARtillerie:砲兵システム搭載トラック)である。カエサルは当初ウニモグの車体を流用していたが、後に国産のルノートラックディフェンスのシェルパ6x6を採用した。近年は8x8の車体を採用し、自動装填装置を装備したモデルも登場している。
▲写真 自動装填装置を採用したカエサル8x8 出典:筆者提供
「簡易型榴弾砲」は自走による道路の高速移動、あるいは空輸による戦略機動を行うことも可能である。ただ近年は6輪よりも8輪の方が主流と為りつつある。カエサルのような6輪だとC-130クラスの輸送機での空輸が可能だが、射撃時の安定性があまりよくない。対して8輪で自動装填装置を有したモデルだとA400Mクラス以上の輸送機でないと運べないものも多い。
これは空輸能力よりも不整地での機動力、射撃時の安定性、自動装填装置の採用による高い発射速度の実現、省力化などを求めているユーザーが多いからだろう。手動装填型はクルーが5名程度、自動装填型であれば3名が普通だ。
「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」は火力戦闘車という仮称で当初三菱重工製の重回収車の車体を流用する予定だったが、ドイツのラインメタルディフェンス傘下のMANディフェンスのMAN社製の8輪軍用トラック、HX44Mを採用している。これは重回収車の車体重量が重すぎたこと、生産が終了するなどが理由とされている。
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