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福島の教訓「想定外」二度と

Japan In-depth / 2020年1月13日 19時0分

「災害復興住宅に入居したけど、お隣の顔が全然見えないの。挨拶もしていないのよ」


「震災前は家族一緒に暮らしてて、息子が病院さ連れて行ってくれてたけど、震災後は離れて暮らすようになった。バスで行くには乗り継いで行かなきゃならないし、タクシーで行くにはお金もかかる。だからと言って、仕事を休んで病院に連れて行ってくれとは言えない」


実際に話す中で感じたのは、震災前、何とか家族や地域の繋がりで維持していた生活が、自然災害によって転居や生活の変化を余儀なくされ、その結果、通院が難しくなった、引きこもりがちになった、といった、目に見えない、しかし確実に日常を蝕む影響だった。


被災地域は、避難や転居で人口が減少し、ヒト、モノ、カネといったリソースが限られ、インフラや医療保健サービスの維持が難しくなる。その中で、どのように健康を維持していくのか。課題は溢れかえっていたが、一人の公務員として何ができるのか、皆目見当もつかなかった。



▲写真 1900戸を擁する東北最大の仮設住宅群である石巻・開成地区。(2013年12月著者撮影)


時を同じくして、東京大学客員教授(当時)の増田寛也氏より2040年に全国1800市区町村の半分の存続が難しいとされる「消滅可能性自治体」が発表された(*1)。具体的な自治体名が列挙され、センセーショナルな内容ではあったが、人口減少の要因であると記された若年女性の減少、地方から都市圏への若者の流出という文字に納得し、石巻の現状を重ねた。


被災した東北は課題先進地域であり、日本の将来像だ、そう直感した。ここで現場の感覚を持ちながら、課題を発信し、解決法を見出したい。そんな気持ちを抱き始めた頃、福島の浜通りを拠点に、内科医として臨床に携わりながら、放射線被ばくや高齢者を研究テーマに国内外に発信していた坪倉正治医師や森田知宏医師(相馬中央病院)の活躍を知った。専門職として理想とする地域との関わり方を見つけた。そう思い、福島への転居と転職を決めた。


話を元に戻そう。地震、津波に加え原発事故の影響を受けた福島でも、石巻同様のことが生じている。一般的に、原発事故後の健康被害として放射線被ばくがある。だが、現在、内部被ばく、外部被ばく共に住民の放射線被ばくによる直接的な影響は非常に小さいレベルに抑えられている(*2,3)。


その一方で避難指示やその後の生活・社会環境変化に伴う健康影響は大きく、生活習慣病の悪化や診療の行動の変化、精神的ストレスなど様々な健康課題が存在することが指摘されている。具体的には糖尿病の発症リスクは震災前と比較して高い状態が続いており(*4)、介護保険料の上昇も指摘されている(*5)。


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