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福島の教訓「想定外」二度と

Japan In-depth / 2020年1月13日 19時0分

また、放射能汚染による避難指示が出された自治体では、順々に避難指示が解除されつつある。しかし、中長期の避難を経ての帰還は、生活・社会環境の変化、地域の高齢化・過疎化、医療アクセスの悪化など、対応すべき健康課題もより多く存在する。これら避難指示解除後の保健課題を、先日、スコットランド・エジンバラ大学の減災シンポジウムで発表した。その一部を紹介したい。



▲写真 スコットランド・エジンバラにて避難指示解除後の保健課題について発表する筆者(2019年12月撮影。著者提供)


2011年9月に村内の一部が緊急時避難区域解除になり、2012年1月に帰村宣言を出した川内村は、2019年現在住民の約80%が村内で生活する。一方、2017年に避難指示が解除された飯舘村の帰村率は約30%。避難指示解除時期によって、帰村率は著しく異なる。飯館村の場合、帰村者の大半は高齢者である。元々、村にはクリニックが1施設、高齢者施設が1施設あったが、避難する中で健康状態が悪化した方が多いと保健師は話す。


「この災害の特徴だと思うのですが、放射能の被害なので、あまり外に出ないようにという傾向があって、その恐怖感からあまり外に出ない生活がだいぶ続きました。避難後も、仮設住宅の中で引きこもっている人もかなりいらっしゃって、そんな風にしてるうちに体重が増加していきました」


「高血圧は治療すれば改善傾向が見られるので、治療が始まった方は改善しているのですが、耐糖能異常、つまり血糖値が一度悪くなってしまった方はなかなか血糖コントロールがつかない状況は今もあります」


このように帰還後さらに医療ニーズは高まるとみられるが、公共交通機関が乏しく、医療機関にアクセスしにくい。


「高齢者世帯は、ご夫婦の片方が運転できて、片方が出来ないというご家庭が結構多いんですが、運転できる方が体調を崩されて入院したりすると、病院の行き来でタクシー代が月に何万円もかかった」


「せっかく村に帰ってきても、医療や介護施設がなければ、村外で生活するしかない」


しかし、人口減で財源が見込めない地域で、どのように住民の健康を担保していくかは議論が必要だろう。



▲写真 スコットランド・エジンバラにて。医療系だけではなく社会科学系の研究者が集まり、災害や地球環境汚染、またその対応について意見交換を交わした。(2019年12月撮影。著者提供)


一方、避難を続けているのは仕事や子どもの教育を重視する若年層だ。震災以前は三世代で行なっていた子育ては、避難によって家族が分散し、シングルやワンオペが増えているという。また発達支援が必要な子どもも増えつつあるが、避難住民の居住地が分散されているため、公的サービスの対応が追いついていないというのが現状である。


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