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福島の教訓「想定外」二度と

Japan In-depth / 2020年1月13日 19時0分

「優先順位としてやはり、ハイリスクの方に行くようになります。村に戻ってきている人はそれほど問題がある人ではないので、村の外にまだまだ出ていっているような、帰還したとは言えども全然エリアがすごく広域になっているところで活動していて限界だなってところがあります」


避難指示解除の時期によって、地域の保健課題の量と質は異なる。またその内容に応じサービス提供のあり方も当然異なる、と私は考えている。被災自治体が一律の対応をすることで負担を被るのは、他ならない住民だ。今後、さらに自治体保健師へのインタビューを重ね、課題を明らかにしていくつもりである。


このような放射能汚染以外の健康影響は、世界的に関心が高まっている。OECDの原子力緊急事態に関する作業部会(WPNEM)は、加盟国のために、放射線緊急時計画と対応のための非放射線学的公衆衛生側面に関する専門家グループ(EGNR)を設立した(*6)。ここでは、チェルノブイリや福島での避難、移住などのコミュニティに大きな心理・社会・経済的影響を及ぼした経験から生まれた数多くの研究や報告書を、実用的なガイドラインに落とし込み、対策に取り入れるべく協議が進んでいる。



▲写真 飯舘村役場前の空間放射線量を示す掲示板(2013年8月撮影。著者提供)


一方、川内原発を擁する鹿児島はどうか。昨年3月、鹿児島県は川内原発で重大事故が生じた場合の避難に関するシミュレーションを公表した(※鹿児島県原子力安全対策課『避難時間シミュレーションについて』2019年3月27日)。原発から近く優先的に避難する5キロ圏の一般住民が計画に沿って避難できた場合、最長でも3時間程度で到着可能。しかし、5~30キロ圏の住民全てが指示に基づかない自主避難をした場合は道路混雑などが響き、5キロ圏の住民が避難するまで60時間以上を要する可能性が生じるという。



▲写真 川内原子力発電所(2007年9月7日撮影)出典: Wikimedia Commons; KEI (Released under the GNU Free Documentation License.)


このような段階的避難は実現可能なのだろうか。福島の場合、放射線量や風向きなど避難先の判断材料になる正確な情報は共有されず、その判断の多くは住民に委ねられた。目に見えず、将来の健康への影響も不透明な放射線暴露を恐れ、住民は一斉に避難。地震で陥没したり寸断されたりしている道路もあったため、一部の道路に車は集中し渋滞。ガソリンスタンドには長蛇の列ができた。


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