「井戸端長屋」とは 福島相馬市リポート その2
Japan In-depth / 2020年1月20日 20時21分
田原大嗣
【まとめ】
・相馬市は既存のシステムに依存せず、常に新しい施策を探る。
・「相馬井戸端長屋」は住民のコミュニケーション促進に有効。
・「安全」を示す客観的なデータの提示を続ける。
昨年12月、私は福島県の相馬市役所と相馬中央病院にて1ヶ月のインターンシップに参加した。
相馬市は、平成23年の東日本大震災で甚大な被害を受け、現在も復興の途上にある。復興の様相を行政・医療といった2つの現場より経験させて頂いたことで、様々なことを学んだ。相馬市の魅力が「伝統」と「柔軟さ」の両立にあるということは先の文章にて述べたが、そうした特性による、震災以降の相馬市における諸施策について具体的な形で紹介していきたい。
まず、相馬市の地理的な背景を見てみる。相馬市を中心とした地域は、西方(福島方面)の阿武隈高地、北方(仙台方面)の駒ヶ嶺、南方(いわき方面)の夜ノ森と、三方を山地や森林に囲まれている。残る一方は海だ。このように、地形的には比較的外部から隔絶した地域である。相馬中村藩による長年の統治という歴史も、こうした地理的事情によるところも大きいだろう。
しかし、戦後になると、交通・通信の利便性の向上も手伝って東京など大都市への人口集中が進み、地方は過疎化した。相馬市も例外ではなく、昭和25年には44375人だった人口が昭和45年には37189人まで減少してしまった。以後人口は横ばいであったところに襲ったのが、東日本大震災である。
津波により、コミュニティの基盤それ自体が根こそぎ失われてしまった。原発事故による風評被害も深刻であった。そうした危機的状況を受けた相馬市・立谷秀清市長の施策の数々は、迅速性・流動性を担保しながらも、その奥底では「相馬市で引き受ける」といった気概に満ちたものであり、震災から9年が経とうとする現在に至るまで大きな効果を残すものであった。
まず紹介したいのが、「相馬井戸端長屋」だ。東日本大震災で被災した高齢者の生活支援の為、災害公営住宅のひとつとして建設されたものだ。
インターンシップの中盤に、相馬市役所の横山英彦秘書課長、相馬中央病院の星光事務長に案内されて訪れたのだが、その際に相馬市保健センターの伊東尚美氏を紹介して頂いた。伊東氏は普段井戸端長屋にて入居者の方々の健康指導をされているということで、自分もご一緒させて頂いた。入居者の方々は高齢ながらも非常にお元気で、お互いに活発にコミュニケーションをとられていたことが印象的であった。
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