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遺伝子検査行う体制作り急げ

Japan In-depth / 2020年2月25日 15時36分

 注意すべきは、検疫は国内に新型コロナウイルスを流入させるのを防ぐためであり、彼らには何のメリットもないことだ。メリットとデメリットを天秤にかける医療事故とは根本的に違う。医療界では似た例は健常者を対象に新薬をテストする第一相治験に近い。被験者の安全には最新の注意が払われ、一例でも死亡例が出たら治験は中止となる。乗員・乗客の人権を考えれば、検疫も同様に扱うべきだ。


ところが、厚労省は乗客や乗員の人権を軽視し続けた。西浦博・北海道大学教授らの研究によれば、クルーズ船内では、一人の感染者から平均して5.5人が感染していたことがわかっている。これは中国疾病対策予防センター(CDC)の研究者たちが、1月29日に米『New England Journal of Medicine (NEJM)』誌に発表した2.2人の2倍以上だ。彼らは武漢の町を対象に感染力を推定した。政府は武漢在住の日本人は政府専用機で救出したが、クルーズ船の乗客には何もしなかった。


 クルーズ船では医療体制にも問題があった。亡くなった84歳の女性の場合、症状が出てから遺伝子検査を受けるまで5日を要し、7日目には入院のため、下船している。亡くなったのは、その8日後だ。遺伝子検査で陽性になったことに驚き、対応を変えたのだろう。


 中国疾病対策センター(CDC)の報告によれば、全体の致死率は2.3%で、10代から40代が0.2%から0.4%なのに対し、80代以上では14.8%と跳ね上がる。


 高齢者を船内に閉じ込めれば、こうなることは容易に予想できたはずだ。停留は他にも問題だらけだ。詳しく知りたい方は、拙文をお読み頂きたい。


 では、どうすればよかったのか。私は乗員、乗客で希望者全員に対して遺伝子検査を行い、陰性だったら自宅に戻せば良かったと考えている。


 遺伝子検査はウイルス感染診断の標準的な方法だ。限界はあるものの現在、最も信頼できる検査だ。遺伝子検査陰性の状態で周囲にうつすとは考えにくいため、自宅に帰っても問題ないだろう。不安なら、定期的に検査をすればいい。


 厚労省は「検査能力が追いつかない」という主旨の説明を繰り返してきたが、それは彼らが国立感染症研究所と地方衛生研究所に委託していたからだ。いずれも「研究所」で、大量の臨床サンプルを処理することに慣れていない。1日の処理数の上限を1,000件程度に抑えてきた。その後、3,000件に拡張したが十分ではない。


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