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遺伝子検査行う体制作り急げ

Japan In-depth / 2020年2月25日 15時36分

国内には約100社の民間検査会社があり、約900の研究所を運用している。一つの研究所で1日に控えめに見て20人を検査するとしても1万8,000人が可能になる。


 遺伝子検査を実施するための「物」も十分にある。知人の試薬会社の社員は「1週間もあれば25万回の検査は準備できる」という。


 問題は厚労省が民間に協力を依頼する気持ちがハナからなかったことだ。検査関係者は「最近、厚労省から検査能力について問い合わせがありました」という。


 世間の批判を受けての動きだろうが、厚労省の対応は見苦しい。厚労省は大手検査会社のみらかグループとBMLに協力を依頼したが、彼らがクリニックから直接検体を受託することを規制した。みらかグループが医療機関に送った文章をご紹介しよう(図1)。彼らは「本検査は厚生労働省及びNIID(感染研のこと)のみから受託するものであり医療機関からの受託は行っていません」と記載している。体裁上はみらかグループの自主的な動きだが、どのような背景があるかは容易に想像がつくだろう。


 亡くなったクルーズ船の乗客は、早い段階で遺伝子検査を受けていたら、もっと早期に診断がつき、助かっていた可能性が高い。


検疫で亡くなった人たちは、国民の命を守るために一命を差し出した人たちだ。PKO活動で亡くなった隊員たちと変わらない。旅行中に引いた風邪をこじらせて亡くなった人とは違う。厚労省は勿論、我々にその認識はあるのだろうか。


私が厚労省の態度に腹が立つのは、自らの責任を回避すべく、平気で解釈をねじ曲げるからだ。


国立感染症研究所は2月19日に、クルーズ船内の感染状況をまとめたデータを発表した(図2)。この結果を受けて、脇田隆字座長は「(船内での)隔離が有効に行われたと確認した」と述べた。私は、このコメントを聞いて空いた口が塞がらなかった。


臨床研究で「比較」という行為を行う場合、比較対象をはっきりさせることが大切だ。脇田氏は、客室での隔離を始めたばかりの2月初旬と、感染者数が減ってきた中旬以降を比較している。このような「比較」をすれば、客室隔離が船内感染の抑制に効果があるということは可能だ。


ただ、これは爆発的な船内感染を批判され、言い訳しなければならなくなった厚労省の視点に立った解釈だ。彼らは検疫を継続することを前提としている。


乗客と乗員の立場に立てば見え方は違ってくる。彼らの健康を考えれば、そのまま上陸し、自宅や医療機関で過ごすという選択肢が「標準」だ。


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