ジャーナリズムのアパルトヘイト
Japan In-depth / 2020年4月4日 11時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・週刊新潮、「フリーランスは記者か」とのコラム掲載。
・記者クラブとフリーランス間では膨大なる知識経験の差がある。
・生ぬるい会見は、当局との友好関係維持のため。
ジャーナリズムのアパルトヘイト、記者クラブ制を絶賛し、フリーランスを貶める高山正之と週刊新潮。
今週の発売の週刊新潮で元産経新聞記者の高山正之氏がコラム「変見自在」で、「フリーランスは記者か」という駄文を書いている。彼の主張は記者クラブの記者こそは選ばれたエリートであり、フリーランスの記者は「記者もどき」であるというものだ。
このような主張はアパルトヘイトの白人至上主義とまったく同じで、愚劣な選民主義だ。
このコラムで高山氏は、記者は過酷な仕事で自殺者がでるほどだと「自慢」している。
「水戸支局時代には読売新聞の記者が自殺し、本社に上がってからは同期と先輩が縊死した。死人が多い職だった」
悩んで心を病んで自殺者が出る職場でないと優秀な記者にはなれないという歪んだ自己陶酔と選民意識が見て取れる。
「本社に上がれた。上がっていいことは専門性の高い記者クラブに出られることだ」
筆者のようなフリーランスの専門記者からみればお笑い草だ。率直に申し上げて我々何十年もやっているフリーランスの専門記者と記者クラブの記者の知識経験の差は極めて大きい。記者クラブの記者は、原稿は書けるだろうが、アマチュアと同じだ。高山氏の主張は小学生が大学生よりも勉強できると威張っているようなものだ。
▲画像 日本記者クラブ入り口(2011)出典:photozou.jp
記者クラブの記者の多くは、その分野の知識がない。単に辞令で配属されるだけだ。しかも異なるジャンルの部署を渡り歩く。これで専門性が培われるはずがあるまい。
そして記者クラブは記者会見だけではなく、レクチャー、懇親会、視察旅行などあらゆる取材機会を記者クラブが囲い込んで、その他媒体やフリーランスの記者を排除している。だが、その割にはものを知らない。フリーランスやその他の媒体の記者には取材機会のハンディがあるが、その元凶は記者クラブである。
「記者クラブは遊んで務まる場ではなかった」
これまた大笑いだ。今でも記者クラブはクラブ経費で飲み食いしているが、高山氏が現役のころだと例えば防衛庁記者クラブは次官に自腹で寿司を奢らせたり、タクシー券までたかっていた。こういうタカリ根性の「自称記者」にまともな記事が書けるわけがない。
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