「軽装甲機動車」後継選定の面妖
Japan In-depth / 2020年4月8日 11時0分
当然ながら下車隊員と車輛の連携は取れない。車輛から火力も支援も、弾薬や食糧なども得られない。また急いで移動が必要になっても徒歩で車輛まで戻る必要がある。軽装甲機動車のAPCとしての採用は機械化歩兵の利点を全部捨て去る行為だ。陸自は機械化歩兵の概念を知らないと思われても仕方がない。
しかも防衛省は明らかにしていないが、軽装甲機動車の装甲レベルは7.62x39mmカラシニコフ弾に耐えられるレベルでしか無く、7.62x51mmNATO弾、あるいは7.62x54ロシアン弾を使用する小銃や機銃の銃撃では蜂の巣となる。そのうえ当初は左右の扉のガラス窓は防弾ガラスでも無かった。また車体下部の防御にしてもせいぜい手榴弾の破片に耐えられる程度だ。
現在の装甲車両は跳弾や剥離した装甲による被害を抑えるためのスポールライナーを装備しているが軽装甲機動車ではコストが高くなるからとオミットされた。そのくせ値段だけは他国の同程度の装甲車の3倍以上はする。更に申せば路上での運用しか要求されていないので、不整地での装甲能力は極めて低い。とても軍用装甲車のレベルではない。
「小型装甲車」を軽装甲機動車同様に7輛で一個小隊を運用するならば、そのすべてに現代の装甲車では必須の無線機、ナビゲーションシステム、バトル・マネジメント・システム、RWSなどを搭載するならばそれらが7セット必要になる。対して分隊が乗車できる大型装甲車ならば3輛で済む。高価なネットワーク関連システムが2.3倍必要となる。
軽装甲機動車の後継は「次期装輪装甲車」に統一すべきだ。そうすれば調達数は850輛程度まで減らせるだろう。その際「次期装輪装甲車」を豪華な8輪装甲車にする必要はない。またそのような予算は陸自にはない。より安価な大型の4~6輪装甲車でいいだろう。
既に陸自で海外展開用に調達しているオーストラリア製のブッシュマスターでもいいだろう。また海外でよく作られているランクルベースの4輪ないし6輪で分隊が搭乗できる軽装甲車ならば2~3千万円程度で調達できる。これらを採用すれば軽装甲機動車の調達コスト以下で調達車両数を大幅に減らすことができる。
筆者には陸幕や装備庁が要求しているサイズや重量などに合致するのは米国のオシュコシュ社が米陸軍向けに生産しているJLTV(Joint Light Tactical Vehicle)しか存在しないように思える。この調達は初めから本命ありきで、形だけに競争入札、官製談合だと批判されても仕方がない。
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