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新型コロナの切り札「抗体検査」

Japan In-depth / 2020年4月30日 11時46分

新型コロナの切り札「抗体検査」


上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)


【まとめ】


・抗体検査が可能に。改善の余地あるが、有用なツール。


・集団免疫政策は合理的だが、世論の反対で方針転換する国も。


・抗体保有で感染リスクは抑制。抗体検査の大規模臨床応用を。


 


「新型コロナウイルスの抗体検査を受けるにはどうすればいいですか?」


知人から聞かれる機会が増えた。多くのメディアが抗体検査について報じ始めたためだろう。堀江貴文氏が抗体検査をした体験を公開したことも話題になっている。知人は、この動画を見たらしい。


https://youtu.be/vF2T-LSwneg


では、抗体検査とは何だろうか。抗体とは血液や体液中に存在し、病原体が体内に侵入してきたときに、それと結合して除去しようとする物質だ。抗体が認識する物質のことを抗原とよぶが、特定の抗体は特定の抗原にしか反応せず、両者の組み合わせは特異的だ。


世界にあまた存在する抗原に対して、どうやって人体が特異的な抗体を作り出すか、そのメカニズムを解明したのが利根川進氏だ。彼は、この業績で1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。



▲写真 利根川進氏 出典: User9131986 / Wiki


このような抗体の特異性を利用したのが、感染症の抗体検査だ。ある病原体に特異的な抗体が体内に存在するか否かを検査することで、その病原体に罹患したか否かがわかる。


麻疹や風疹の場合、抗体が存在することは免疫があることを意味する。ただ、すべての病原体がそうではない。HIVやC型肝炎は抗体があっても、必ずしも免疫があることを意味しない。このような病原体は抗体があっても、慢性感染することが多く、抗体の存在は感染を意味する。


では、新型コロナウイルスはどうだろうか。多くの専門家は抗体の存在は、麻疹や風疹などのように完全に防御するレベルではないにしろ、ある程度の免疫が存在することを意味すると考えている。


この点については、免疫の存在を支持する複数の研究が報告されている。例えば、中国の深圳の南方科技大学の研究者は、新型コロナウイルス感染から治癒した患者の血漿(血液の一部)を、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重症肺疾患を合併した5人の患者に投与したところ、3人は回復して退院、2人は安定した状態を維持したと報告している。この事実は新型コロナウイルスから回復した患者の血液には何らかの免疫物質が含まれていることを意味する。


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