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「黒人の命も大切」ではなく「黒人の命こそ大切」

Japan In-depth / 2020年6月4日 18時31分

「黒人の命も大切」ではなく「黒人の命こそ大切」


岩田太郎(在米ジャーナリスト)


【まとめ】


・白人警察シャービン氏の起訴は、彼の無罪を確実にする茶番劇。


・白人たちは「I can’t breath」ではなく「They can’t breath」と叫ぶべき。


・「Black Lives Matter」の「黒人の命も大切」という日本語訳に批判殺到。


 


■ 起訴はガス抜きと無罪のための仕掛け


全米に抗議デモが巻き起こるきっかけとなった、ミネソタ州ミネアポリスの白人警官による丸腰黒人の殺害事件は、同州の黒人の州司法長官自らが、白人警官のデレク・ショービン容疑者(44)の訴因を、懲役最高25年の第3級殺人(人命の尊さに著しく無頓着な心理状態で、意図せずに犯した殺人)から懲役最高40年の第2級殺人(計画性はないが意図的に犯した殺人)に格上げし、現場で殺人を幇助した3人の警察官をも起訴するという、異例の展開となった。


理不尽に命を落とすことになったジョージ・フロイド氏(享年46)の遺族は、終身刑に処される「計画性のある第1級殺人」での起訴を求めていたため、警官を訴追することが困難である状況の中での、最大の妥協案ともいえる。


しかし、現実には公務中の警察官の殺意の立証は、らくだが針の穴を通るよりも難しい。過去の類似ケースの決着のパターンから見て、裁判所にこのケースが送致される前に起訴処分が取り消されるか、裁判で無罪になる可能性が非常に高い。


ショービン容疑者を、刑がより重いが有罪のハードルもはるかに高い第2級殺人で起訴したことは、米国内外で高まる警察や司法への憤りのガス抜きを行うと同時に、白人警官の不起訴あるいは無罪を確実にするための、検察の温情の茶番劇であるとの解釈も成り立つ。


 


■ 黒人の抗議を乗っ取る白人


そうした中、筆者の住む西海岸、北西部のオレゴン州においても抗議デモが各地で繰り広げられている。米国勢調査局の2019年の推定では、全住民約420万人の内、なんと約87%を白人が占めるという、全米でも「最も白い」州のひとつである。特にデモの中心となった都市部には裕福なリベラル層が多く、当然、参加者も大多数は白人だ。


何千人にも上る彼らの抗議行動を間近に観察していて特に興味深かったのは、参加者たちが口々にフロイド氏の最期の言葉である、「息ができない」を意味する「I can't breathe」を叫んでいたことである。筆者はそれを見て、吐き気を催した。


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