日産よ、復活の狼煙を上げよ
Japan In-depth / 2020年6月7日 18時0分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・日産自動車、ゴーンショック後大幅な赤字に転落。
・電動化、新技術で先行するも、商品化は遅いのが不思議。
・リストラ出来ぬなら、アライアンスの価値最大化が最終手段。
去る者日々に疎し。カルロス・ゴーン被告が話題に上ることもほとんどなくなった。が、日産がまた苦境に喘いでいる。また、と言ったのは、ゴーン被告が日産再建のためにルノーから送り込まれた20年前の時を思い出したからだ。日産は2000年3月期に6843億円の赤字となったが、2020年3月期の最終損益は皮肉にもほぼ同規模の6712億円の赤字となったのだ。
以前の記事にも書いたが日産にはお家騒動の系譜がある。前回は、労組のドンと石原俊会長(当時)との確執。今回は、ゴーン被告と西川廣人前代表執行役社長兼CEOらとの権力闘争だ。どちらも経営とは別のところでエネルギーを使い、会社の屋台骨が揺らいだ。
筆者は、1979年に日産に入社、日産がルノーに支援を仰ぐ直前の1992年に辞めた。その後、記者に転じ、ゴーン被告にも何回かインタビューしたし、日産をずっと取材し続けてきた。
ゴーン被告がいち早く電動化に目をつけ、経営資源を集中させたときは、その思い切りの良さに、慧眼だと感心したものだが、その後が良くなかった。
不思議なことに、電気自動車(EV)リーフを2010年に発売してから、他のモデルの電動化は一向に進まなかったのだ。モーターショーなどで日産の社員に毎回質問しても、明快な答えは返ってこなかった。
▲写真 日産リーフ 出典:日産自動車
ハイブリッドカー(HV)プリウスに注力していたトヨタ自動車は、EV開発に本腰を入れることが出来なかった。未だにフルEV(純粋にバッテリーとモーターだけで駆動するEV)は出していない。そのかわり、プリウスにプラグインハイブリッド(PHV)モデルを追加するなど、HV、PHV連合で市場を押さえに行く戦略を進めた。
▲写真 トヨタプリウスPHV 出典:トヨタ自動車
中国が一気に電動化を推し進め始め、EVや燃料電池車(FCV)などを新エネルギー車と定義づけ、その普及に一気に推し進めるべく政策の舵を切った。新エネ車にHVが含まれなかったので、一瞬トヨタが世界市場で不利になるかと思われたが、その後中国はPHVも新エネ車に加えたのでトヨタはほっとしたことだろう。その後中国の経済成長鈍化などもあり、電動化のスピードは鈍っている。
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