日産よ、復活の狼煙を上げよ
Japan In-depth / 2020年6月7日 18時0分
▲写真 上海の渋滞 出典:flickr : Carlos ZGZ
いずれにしても世界の電動化の潮流は、メディアが騒ぐほど進んでいない。その理由だが、一つには、まだまだEVの価格が高いこと。二つ目に、走行距離など性能的にユーザーが満足していないこと。三つ目には充電網などのEVのインフラが不十分でないことなどがあるだろう。
■ 日産の戦略:不思議その1
このような環境の中で、日産がEVのコストダウンを図るためには、リーフの技術を他のモデルに移植してEVのラインアップを増やすことが近道だ。既にEVの技術もプラットフォームもあるのだから、他モデルに移植することは容易だし、他社に技術を売ることもできたはずだ。しかし、この10年間その動きは全く見られなかった。EVの車種が一向に増えないのが第1の不思議だ。
■ 日産の戦略:不思議その2
その後、日産は更に不思議な戦略をとる。EVの車種を増やす前に、“e-POWER(イーパワー)”なる技術を開発したのだ。e-POWERとは、ガソリンエンジンとモーターを融合した電動パワートレインで、ガソリンを燃料にエンジンが発電機を回して電気をつくり、モーターで駆動するシステムだ。
▲写真 e-POWERのパワートレイン 出典:日産
この技術は、先ほど上げた二つ目の弱点、走行距離の問題を一挙に解決した。充電専用のガソリンエンジンを搭載するというコペルニクス的転回で。ライバルから「こんなものEVじゃない!」などの声も聞こえてきそうな技術ではあるが、ユーザーは歓迎した。最初に搭載されたのはノート(2016年11月)で、大好評を博し、その後、セレナにも追加設定された。(2018年3月)変化球だったが予想を裏切り両モデルともばか売れしたのだ。
▲図 「e-POWER」のしくみ 出典:日産自動車
しかし、その2モデルだけで他モデルにe-POWERはなかなか水平展開はされなかった。ようやく今年になり新モデルに搭載されたが、その発表はタイ日産だった。それが新型コンパクトSUV、日産“KICKS(キックス)”だ。日産の公式ホームページ内に先行公開サイトも開設され、まもなく不振の国内市場に投入されるようだが、いかにも遅い。せっかくユーザーに受け入れられた新技術も市場投入が遅れてはその優位性が失われるのは自明の理ではないか。なぜ、e-POWER搭載車を増やさないのかが第2の不思議だ。
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